2025.07.31
投稿日:2025.07.31 最終更新日:2026.06.09
「解体工事で、もし地中のガス管を壊してしまったら…」 「水道管や電気のケーブルを傷つけたら、保険はちゃんと使えるんだろうか?」
解体工事を予定している事業者様にとって、ライフラインの損傷事故は特に気になるリスクの一つではないでしょうか。
結論からお伝えすると、解体工事中に起こるライフラインの損傷事故は、多くの場合、基本的な工事保険で対応できます。
ただし、保険の契約内容によっては補償の対象外となるケースもあるため、注意が必要です。
この記事では、ライフラインの損傷で保険が「使える」ケースと「使えない」ケースの違い、そして失敗しないための保険選びのポイントを分かりやすく解説します。
工事現場では、作業中に工具が落下して通行人にケガを負わせたり、重機の操作ミスで隣接する建物や車両を損傷させてしまう事故が起こりえます。こうした「第三者への損害」が発生した場合、施工業者は法律上の賠償責任を負うことになります。 民法第709条では「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利
工事現場での作業中、第三者にケガを負わせてしまったらどうしますか? 建設業は全産業の中で最も労働災害が多く、令和6年には死亡者数746人のうち建設業が232人と最も多く、全体の約31.1%を占めています。これらの事故では、作業員だけでなく通行人や近隣住民など第三者が被害に遭うケースも少なくありませ
製品や工事の欠陥が原因で、第三者に損害を与えてしまったらどうしますか? 製造業や建設業では、引き渡し後に製品や建物の欠陥が発覚し、高額な賠償責任を問われるリスクが常に存在します。実際に、製品の欠陥による事故では数百万円から数千万円規模の賠償が発生しているケースも少なくありません。 この記事では、
目次

解体工事で、重機が地中のガス管を破損してしまった、建物の取り壊し中に上空の電線を切断してしまった——このようなライフライン損傷事故は、実は珍しくありません。
ただし、保険で補償されるかどうかは、損傷したライフラインが「地上にあるか」「地中にあるか」で大きく異なります。
では、このような事故に備えるには、どのような保険に加入すべきなのでしょうか。
ライフラインの損傷事故に対応する基本的な保険が「請負業者賠償責任保険」です。
この保険は、工事の遂行中に第三者の財物に損害を与え、法律上の賠償責任を負った場合に、その賠償金をカバーすることを目的としています。
ただし、重要な注意点があります。地上のライフライン(電線・道路施設など)は標準契約で補償されますが、地中のライフライン(ガス管・水道管など)は特約を付けない限り補償されないのが一般的です。
解体工事でライフラインを損傷した場合、施工業者は民法に基づき賠償責任を負います。
具体的には、民法第709条で「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」と定められています。
また、民法第715条では「ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う」と使用者責任が定められています。
ガス管や水道管は、いうまでもなくガス会社や水道局が所有する「第三者の財物」です。
したがって、工事中にこれらを破損してしまった場合は、この保険の基本的な補償対象に含まれます。
万が一保険に未加入の状態で事故を起こしてしまうと、民法上の賠償責任にもとづき、施工業者が賠償金を全額自己負担することになってしまいます。
多くの保険には、被害者との示談交渉サービスも付帯しており、事故後の煩雑な対応をスムーズに進める上でも大きな助けとなります。
工事現場では、作業中に工具が落下して通行人にケガを負わせたり、重機の操作ミスで隣接する建物や車両を損傷させてしまう事故が起こりえます。こうした「第三者への損害」が発生した場合、施工業者は法律上の賠償責任を負うことになります。 民法第709条では「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利
まず、標準的な請負業者賠償責任保険で補償されるライフライン損傷から見ていきましょう。
解体工事の現場で起こりがちな事故には、主に以下のようなものがあります。
建物の取り壊し中に、重機のアームや飛散した解体材が上空の電線や通信ケーブルに接触し、切断してしまうケースです。
広範囲にわたる停電や通信障害を引き起こし、周辺の家庭や企業に大きな影響を与える可能性があります。
これらは電力会社や通信事業者が所有する「第三者の財物」にあたり、標準的な請負業者賠償責任保険で補償されます。
重機の搬入・搬出時や作業中の移動によって、公道のアスファルトや縁石、ガードレール、カーブミラーなどを損傷させてしまうケースも少なくありません。
道路は国や自治体が管理する公共物であり、その損害は賠償責任の対象です。
たとえ軽微な損傷であっても、原状回復には専門的な工事が必要となり、これらも標準的な保険でカバーされます。
地上のライフライン・道路施設の損傷では、復旧費用が高額になるケースも少なくありません。
実際の事例を見てみましょう。
ビル解体工事中、重機が誤って公道の路肩ブロックに衝突・破壊した事故です。
損害額:約112万円
路肩ブロックおよび付帯するガードレールの一部が損傷し、通行車両や歩行者の安全確保のため工事は一時中断されました。自治体が復旧工事を実施し、費用相当額を施工業者に請求。標準的な請負業者賠償責任保険により全額賠償金が支払われました。
重機オペレーションの過誤が原因で、狭隘な作業区域内でバックホーを旋回中に後方確認が不十分で、境界を越えて路肩設備に接触しました。
このように、地上のライフラインや道路施設の損傷は、標準的な請負業者賠償責任保険で補償されます。
一方で、地中に埋設されたライフラインの損傷は、標準契約では補償されないケースが多いという点に注意が必要です。
掘削作業中に、地中に埋設されたガス管や水道管を重機で破損させてしまうケースは、解体工事で最も頻繁に起こりうるトラブルの一つです。
ガス漏れや断水を引き起こすだけでなく、引火による爆発など二次災害のリスクもあり、復旧費用は高額になりがちです。
しかし、多くの保険会社では、地中埋設物の損壊は標準契約では免責(補償対象外)とされています。
地中のガス管・水道管を補償するためには、「地中埋設物損壊補償特約」といったオプション特約を付帯させることが必須です。
この特約の詳細や、保険が使えない具体的なケースについては、次の章で詳しく解説します。

前章で解説したように、地上のライフラインは標準契約で補償されますが、地中のガス管・水道管は特約が必要です。
さらに、それ以外にも保険が使えないケースはあります。
具体的には、以下の3つのケースです。

前章でも触れましたが、地中に埋設されているライフラインの損壊は、もっとも注意が必要なケースです。
標準的な請負業者賠償責任保険の契約では、「地中にあるもの」の損壊は補償の対象外(免責)とされているケースが少なくありません。
主要保険会社の請負業者賠償責任保険約款では、以下のような免責事項が定められています。
補償されない損害(主な免責事項):
保険料を安くするために、「地下埋設物損壊不担保特約」が自動的にセットされている商品もあるほどです。
この事実を知らずに契約していると、いざ地中のガス管や水道管を破損してしまった際に、保険金が支払われず、高額な修理費用を全額自己負担するという事態になりかねません。
このリスクを回避するためには、「地中埋設物損壊補償特約」といったオプションの特約を付帯させることが欠かせません。
自社の保険証券を確認し、この特約が付いているか、あるいは免責となっていないかを必ずチェックしましょう。
地中埋設物の保険について詳しく知りたい方は下記の記事もあわせてご覧ください。
「解体工事の作業対象である建物そのものは、多くの保険で補償の対象外になる」 実は、解体事業者が加入する賠償責任保険には、このように補償が適用されない「免責事項」がいくつも定められています。 このルールを知らないまま万が一の事態が起きれば、損害が自己負担となり、会社の経営に大きな影響を与えることも

請負業者賠償責任保険がカバーするのは、あくまで「工事中」の事故に限られます。
では、工事が完了し、建物を引き渡した後に施工ミスが原因で事故が起きた場合はどうなるのでしょうか。
このような「工事完了後」の事故は、請負業者賠償責任保険の対象外です。
こうしたリスクに対応するのは、「生産物賠償責任保険(PL保険)」という別の保険の役割となります。
請負業者賠償責任保険とPL保険は、補償する期間(工事中か、工事後か)が明確に分かれているのです。
この二つをセットで加入しておかなければ、引き渡し後に発覚した事故に対しては無保険状態になってしまう、ということを覚えておきましょう。
製品や工事の欠陥が原因で、第三者に損害を与えてしまったらどうしますか? 製造業や建設業では、引き渡し後に製品や建物の欠陥が発覚し、高額な賠償責任を問われるリスクが常に存在します。実際に、製品の欠陥による事故では数百万円から数千万円規模の賠償が発生しているケースも少なくありません。 この記事では、

賠償責任保険が支払う保険金は、原則として損壊した「モノ」の修理費用など、法律上の賠償責任を負う損害に限定されます。
そのため、事故が原因で発生したとしても、以下のような費用は補償の対象外となるのが一般的です。
ガス管破裂事故などで、行政から法令にもとづき罰金や科料を科されたとしても、その金額は保険ではカバーされません。
保険の約款にも、制裁金などは支払対象外であることが明記されています。
事故の影響で近隣の店舗が営業できなくなった場合の営業損失(休業損害)も、原則として対象外です。
特に、物理的な損害をともなわない「工事がうるさくて客足が減った」といったクレームによる逸失利益は補償されません。
保険はあくまで直接的な損害を補うものであり、事業活動の停止にともなう間接的な損害や、行政罰まではカバーできない、ということを理解しておく必要があります。
使えるケース・使えないケースを理解したところで、次は保険選びです。
失敗しないために、以下の3つのポイントは必ず押さえておきましょう。
この機会に、自社の保険がこれらのポイントを満たしているか、ぜひ確認してみてください。

まず確認すべきは、補償される金額の上限、すなわち「保険金額」です。
地上の電線や道路施設、地中のガス管や水道管といったライフラインの損傷は、単純な修理だけでも数十万〜数百万円の費用がかかります。
さらに、ガス管破損による引火や爆発といった二次災害、あるいは人身事故につながった場合には、賠償額が数千万円〜数億円規模に膨らむ可能性も考えられます。
一般的な工事保険では、1事故あたりの補償限度額を1億円〜3億円に設定するプランが多く見られます。
自社の事業規模や請け負う工事の内容を考え、万一の事態を想定しても十分に対応できる補償額が設定されているか、必ず確認しましょう。
保険料を抑えたいからと補償額を低く設定しすぎると、いざという時に保険が役に立たない、ということにもなりかねません。

次に、保険証券の細かい文字で書かれた「特約」や「免責事項」の欄を丁寧に確認します。
特に、ライフライン損傷のリスクにおいて、以下の点は見落としがちな重要ポイントです。
前述の通り、「地下埋設物損壊不担保特約」などが付いているか、必ず確認しましょう。
解体工事において、この補償がないのは大きなリスクとなりかねません。
「1事故につき10万円は自己負担」といった免責金額が設定されている場合があります。
この金額が高いと、小規模な事故では保険を使えないことになります。
自社の体力に合わせて、的確な免責金額を設定することが重要です。
保険は「契約内容がすべて」です。
口頭での説明だけでなく、証券に記載された文言を正しく理解し、自社に必要な補償が確保されているかを見極めることが、リスク管理の鍵となります。

最後に、意外と見落とされがちなのが「告知義務」の確認です。
告知義務とは、保険を契約する際に、事業の内容や年間売上高、過去の事故歴などを、保険会社に対して正しく申告する義務のことです。
契約時の告知内容を今一度確認し、実態と相違がないかチェックしましょう。
たとえば、以下のようなケースは告知義務違反とみなされる可能性があります。
告知義務違反が発覚すると、保険会社は契約を解除でき、たとえ事故が起きても保険金は一切支払われません。
保険会社は保険金を支払う際に詳細な調査をおこなうため、虚偽の申告はいずれ必ず発覚します。
契約時には、事業の実態を正直かつ正確に伝えることが、最終的に自社を守ることにつながります。
解体工事に潜むリスクは、ライフラインの損傷だけではありません。
近隣トラブル、アスベスト、地中埋設物といった問題も、事業に影響を与えうるリスクです。
そして、これらのリスクの多くは、基本的な請負業者賠償責任保険だけではカバーしきれない、という共通点があります。
具体的には、以下の3つのケースが挙げられます。

解体工事と近隣トラブルは、しばしば問題となります。
特に多いのが、騒音や振動に対するクレームです。
もし、工事の振動が原因で「隣の家の壁にひびが入った」というように、明確な物的損害が発生した場合は、その修理費用は請負業者賠償責任保険で補償されます。
しかし、問題は物的損害をともなわないケースです。
「工事がうるさくて眠れない」「精神的な苦痛を受けた」といった理由で慰謝料を請求されたとしても、原則として保険金の支払いは困難です。
賠償責任保険は、あくまで物理的な損害を補うためのものであり、無形の被害まではカバーしきれないのが実情です。
保険だけに頼るのではなく、事前の挨拶回りや防音シートの設置といった、トラブルを未然に防ぐ努力が何よりも重要になります。
「解体工事の騒音クレームは、保険で対応できるはずだ」 もし、そう考えているのであれば注意が必要です。 結論からいうと、解体工事にともなう騒音・振動・粉塵といった近隣トラブルは、原則として保険の適用対象外です。 そう聞くと、「一体何のための保険なのか」と疑問に思われるかもしれません。 この記事

アスベスト(石綿)は、解体工事において特に注意が必要な有害物質です。
そして、このアスベストに起因する損害は、ほぼすべての請負業者賠償責任保険で「補償対象外(免責)」と定められています。
健康被害の範囲や期間の予測が極めて困難なため、保険会社がリスクを引き受けきれないのです。
そのため、万が一アスベストを飛散させてしまい、近隣住民に健康被害を与えたとしても、通常の保険では補償されないということです。
ただし、一部の保険会社では例外的に、AIG損保の「アスベスト飛散事故補償特約」のような専門の保険や、損保ジャパンの「アスベストコストキャップ保証」のような、想定外の除去費用をカバーする保証制度が提供されています。
アスベストに関する詳細は下記記事もあわせてご覧ください。
解体工事におけるアスベスト対策について、「うちの会社は、ちゃんと工事保険に入っているから大丈夫」とお考えの場合は、一度お手元の保険証券を確認してみてください。 その保険証券の小さな文字で書かれた部分に、「アスベスト(石綿)による損害は補償の対象外」という一文が見つかるかもしれません。 実は、多く

工事を進めていく中で、図面にはなかった古い建物の基礎や浄化槽、コンクリートガラといった地中埋設物が発見されることもあります。
これらの撤去・処分には、時として数百万円単位の追加費用が発生しますが、この費用は請負業者賠償責任保険の対象外です。
なぜなら、これは第三者に損害を与えた「賠償責任」ではなく、あくまで自社の工事を進める上で発生した「コスト」と見なされるためです。
この地中埋設物の撤去出費は、完全に自己負担となります。
このリスクに備えるためには、民間の「地中埋設物包括保証」といった専門の保証サービスを利用するか、施主との契約段階で「想定外の埋設物が発見された場合は、追加費用を請求する」旨を明確に合意しておくといった対策が必要になります。
「解体工事の作業対象である建物そのものは、多くの保険で補償の対象外になる」 実は、解体事業者が加入する賠償責任保険には、このように補償が適用されない「免責事項」がいくつも定められています。 このルールを知らないまま万が一の事態が起きれば、損害が自己負担となり、会社の経営に大きな影響を与えることも
本記事では、解体工事におけるガス管や水道管といったライフライン損傷のリスクについて、保険適用の可否を詳しく解説してきました。
結論として、基本的なライフラインの損傷は「請負業者賠償責任保険」でカバーできるものの、地下埋設物の損壊や工事完了後の事故など、特約がなければ補償されないケースも多いという点を押さえておくことが重要です。
ライフラインの損傷リスクに正しく備えることは、企業の安定経営のために重要です。
「自社の保険は本当に大丈夫か?」と少しでも感じたら、ぜひ一度、専門家にご相談ください。
私たち株式会社マルエイソリューションは、工事保険のプロとして、お客様一社一社の状況に合わせた最適な保険プランをご提案し、コスト削減と安心の両立をサポートします。
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