投稿日:2024.12.24 最終更新日:2025.12.11
【工事現場向け】生産物賠償責任保険(PL保険)とは?施工後の事故に備える補償内容を解説
製品や工事の欠陥が原因で、第三者に損害を与えてしまったらどうしますか?
製造業や建設業では、引き渡し後に製品や建物の欠陥が発覚し、高額な賠償責任を問われるリスクが常に存在します。実際に、製品の欠陥による事故では数百万円から数千万円規模の賠償が発生しているケースも少なくありません。
この記事では、生産物賠償責任保険(PL保険)の基本から、実際の事故事例、補償内容、保険料の目安まで、PL保険について知っておくべき情報をまとめました。自社の事業を守るための参考にしてください。
- PL保険の基本と製造物責任法(PL法)との関係
- PL保険が必要な5つの理由
- 実際の事故事例と賠償金額
- 補償される内容と補償されないケース
- 保険料の目安と加入方法
賠償責任保険の必要性|工事現場の第三者リスクと補償事例をわかりやすく解説
工事現場での作業中、第三者にケガを負わせてしまったらどうしますか? 建設業は全産業の中で最も労働災害が多く、令和6年には死亡者数746人のうち建設業が232人と最も多く、全体の約31.1%を占めています。これらの事故では、作業員だけでなく通行人や近隣住民など第三者が被害に遭うケースも少なくありませ
請負業者賠償責任保険とは?補償内容・特約・加入の必要性をわかりやすく解説
工事現場では、作業中に工具が落下して通行人にケガを負わせたり、重機の操作ミスで隣接する建物や車両を損傷させてしまう事故が起こりえます。こうした「第三者への損害」が発生した場合、施工業者は法律上の賠償責任を負うことになります。 民法第709条では「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利
建設工事保険で現場を守る!補償範囲や補償外のケースもあわせて解説
建設工事に携わる皆さんにとって、建設途中の建造物・資材が壊れたり、傷ついたり、はたまた盗まれてしまったり…といった「もしも」の状況は案外珍しいことではありません。 実際に、国土交通省の建設工事事故データベースによると、令和元年から令和4年度にかけて約1,600件の建設工事事故が発生しています。
目次
工事現場における生産物賠償責任保険(PL保険)とは?

生産物賠償責任保険(PL保険)は、製品や工事の欠陥が原因で第三者に生じた損害の賠償をカバーする保険です。
「生産物」とは、製造・販売した製品だけでなく、完了・引き渡した工事や作業の結果も含まれます。建設業では、施工完了後に建物や設備の不具合が発覚し、第三者に損害を与えるリスクが常に存在します。
例えば、外壁タイルが落下して通行人が怪我をしたり、設備配線の施工ミスが原因で火災が発生し、隣接する建物に損害を与えるケースなどがあります。こうした状況で施工業者が損害賠償責任を問われると、多額の賠償金や訴訟費用が企業の財務に大きな負担をかけることになります。
製造物責任法(PL法)とPL保険の関係
PL保険の「PL」は「Product Liability(製造物責任)」の略で、製造物責任法(PL法)に基づく賠償責任をカバーする保険です。
製造物責任法第3条では、以下のように定められています。
「製造業者等は、その製造、加工、輸入または前条第3項第2号もしくは第3号の氏名等の表示をした製造物であって、その引き渡したものの欠陥により他人の生命、身体または財産を侵害したときは、これによって生じた損害を賠償する責めに任ずる。ただし、その損害が当該製造物についてのみ生じたときは、この限りでない。」
つまり、製品の欠陥によって他人に損害を与えた場合、製造業者等は過失の有無に関わらず損害賠償責任を負う(無過失責任)ことになります。これがPL法の特徴です。
PL法は1995年7月1日に施行され、製品の安全性に対する企業の責任が明確化されました。この法律により、消費者は製造業者の過失を証明しなくても、製品の欠陥を立証すれば損害賠償を請求できるようになりました。
PL保険は建設業界だけでなく、製造業やサービス業でも広く利用されていますが、特に建設業界では施工後に発生するリスクへの備えとして非常に重要です。
建設業でPL保険が必要な5つの理由
PL保険への加入が重要な理由を5つご説明します。

1. 高額賠償リスクのカバー
製品や工事の欠陥による事故では、被害の規模によって数百万円規模の賠償責任が発生します。特に人身事故の場合、治療費、慰謝料、逸失利益などが高額になるケースがあります。
このような高額賠償を自己負担で支払うことは、特に中小企業にとって企業存続に関わる深刻なリスクとなります。以下、実際の事故事例をご紹介します。
事例1:建設工事の施工不良による設備損害
既存建物の地盤沈下を修正する特殊工事において、埋め戻し作業の不備により敷地内の埋設配管を破損し、配管の交換工事が必要となった事例です。
地盤沈下補修工事で充填材の施工不良があり、十分に空隙が埋められなかったため地中配管が圧力で破損しました。
施工業者のミスが原因で第三者(施主)の財物(設備配管)に損害が生じたケースで、生産物賠償責任保険から約426万円が支払われ、被害配管の交換費用に充てられました。
事例2:建物引き渡し後の雨漏りでエレベーター設備損害
新築建物の引渡し後に屋上の防水不備から雨漏りが発生し、エレベーターホールに浸水してエレベーター設備が故障しました。
施工後の建物防水処理の不備(雨仕舞い不良)が原因で雨水侵入事故が起き、設置設備(エレベーター)が水濡れ損害を受けたケースです。
施工業者が第三者設備に対する損害賠償責任を問われ、PL保険に基づき約78万円の修理費用が保険会社から支払われ、設備管理者への賠償が行われました。
2. 経営安定化・倒産リスク回避
高額な賠償金の支払いは、企業のキャッシュフローに深刻な影響を与え、最悪の場合は倒産につながる可能性があります。PL保険に加入していれば、保険金で賠償金をカバーでき、経営への影響を最小限に抑えられます。
3. 対外的信用の向上
PL保険への加入は、製品の安全性に対する企業の真摯な姿勢を示すものであり、取引先や消費者からの信頼獲得につながります。特にBtoB取引では、PL保険への加入が取引の前提条件となるケースも増えています。
4. 取引先要請への対応
大手企業や公共事業では、下請業者や納入業者に対してPL保険への加入を義務付けるケースが増えています。PL保険に加入していないと、商談や入札の機会を失う可能性があります。
5. 訴訟費用のカバー
製品事故が発生すると、賠償金だけでなく、弁護士費用や訴訟費用も高額になります。PL保険では、これらの費用も補償対象となるため、安心して適切な対応ができます。
工事完了後のリスクをカバー:PL保険の補償内容
ここでは、生産物賠償責任保険(PL保険)が具体的にどのようなリスクをカバーしてくれるのかをご紹介します。
第三者への対人・対物賠償事故
製造・販売した製品や完了した仕事の結果(生産物)が原因で、他人の生命・身体に怪我を負わせたり他人の物を壊して法律上の損害賠償責任を負った場合が補償対象です。日本国内で保険期間中に発生した事故が対象となります。
支払われる主な費用
PL保険では、以下の費用が補償されます。
- 被害者に支払う法律上の損害賠償金:治療費、慰謝料、修理費用など
- 賠償責任に関する裁判費用・弁護士費用等:訴訟になった場合の費用
- 事故時の応急措置費用:事故発生直後の緊急対応費用
- 損害拡大防止費用や求償権保全費用:二次被害を防ぐための費用
保険金は契約の支払限度額の範囲内で支払われ(免責金額を差し引き)、訴訟費用等も原則全額補填されます。
施工後の事故による賠償責任
生産物賠償責任保険(PL保険)は、施工後に建物や設備が原因で発生した事故による損害賠償責任を補償します。例えば、施工した建物の外壁が崩れ、通行人が怪我を負った場合や、構造物が隣の建物に被害を与えた場合などが該当します。
製品や設備の欠陥による損害賠償
施工や設置した製品や設備に欠陥があり、第三者に被害を与えた場合も補償の対象です。例えば、設置された設備が動作不良を起こし、周囲の施設や人に損害を与えたケースなどが含まれます。
建設業のPL保険で補償されないケース(免責事項)
PL保険には免責事項があり、すべての損害が補償されるわけではありません。主な免責事項を理解しておくことが重要です。

自社製品・工事そのものの損害
製品そのものの損壊(欠陥が生じた当該生産物自体の修理・交換費用)や、仕事の目的物そのものの損壊(施工対象そのものに生じた損害)は補償対象外です。
例えば、製造した機械自体が故障した場合の修理費用や、施工した建物自体に生じた損害は、PL保険ではカバーされません。これは「第三者への損害」ではなく、自社の財物への損害だからです。
重過失・法令違反
被保険者(企業)の故意または重大な過失による法令違反行為に起因する製品・仕事事故は補償対象外です。例えば、安全基準を無視して製造した製品による事故などは対象外となります。
品質不保証・虚偽表示
製品や仕事の効能・性能についての不当表示または虚偽の表示に起因する事故は補償されません。
工事中(完了前)の事故
引渡し前・工事途中に発生した事故はPL保険の補償範囲外です。これらの事故は請負業者賠償責任保険等でカバーする必要があります。
リコール関連
正当な理由なく必要な回収(リコール等)措置を怠ったことによる事故や、その回収費用そのものは補償されません。リコール費用については別途リコール保険への加入が必要です。
自然災害による損害
地震や台風などの自然災害による損害は、PL保険では補償されません。PL保険は人的な施工ミスや製品の欠陥が原因で発生する事故を主に対象としているため、自然災害によるリスクは別の専用保険で対応することが一般的です。
経年劣化や通常使用による損害
製品や設備の経年劣化、または通常の使用によって発生する損害も補償対象外です。例えば、設備が長期間の使用により摩耗し、事故を引き起こした場合などがこれに当たります。
補償の条件・制限
支払限度額と免責金額
賠償金については契約時に定めた1事故あたりの支払限度額までが補償されます。契約ごとに免責金額(自己負担額)が設定されている場合、保険金は損害額から免責金額を控除した額となります。
期間・地域要件
通常は保険期間内に日本国内で発生した事故に限り補償されます。
注意:日本企業が海外で工事を行った場合、海外で発生した事故は補償対象外です。海外案件を扱う場合は事前に保険会社へご相談ください。
工事リスクを全面カバー:PL保険と併用したい賠償責任保険

PL保険は施工後に発生する事故や損害を補償しますが、それだけではカバーしきれないリスクもあります。PL保険で補償されないリスクをカバーするためには、他の賠償責任保険の導入を検討することが効果的です。
請負業者賠償責任保険
PL保険は施工完了後に発生する事故を対象としていますが、施工中に発生する事故は補償範囲外です。このギャップを埋めるのが請負業者賠償責任保険です。
例えば、施工中に重機が倒れて隣の建物に被害を与えた場合や、作業員のミスで第三者が負傷した場合などが対象になります。この保険を組み合わせることで、施工中から施工後までのリスクに備えることが可能です。
請負業者賠償責任保険とは?補償内容・特約・加入の必要性をわかりやすく解説
工事現場では、作業中に工具が落下して通行人にケガを負わせたり、重機の操作ミスで隣接する建物や車両を損傷させてしまう事故が起こりえます。こうした「第三者への損害」が発生した場合、施工業者は法律上の賠償責任を負うことになります。 民法第709条では「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利
施設賠償責任保険
事務所や倉庫などの施設が原因で発生した事故を補償する保険です。例えば、事務所の看板が落下して通行人が怪我をした場合や、倉庫の床が濡れていて来客が転倒した場合などが対象となります。
施設の管理に起因する事故は、PL保険ではカバーされないため、施設賠償責任保険との併用が推奨されます。
まとめ:建設業のPL保険で施工後のリスクに備えよう
生産物賠償責任保険(PL保険)は、施工後に建物や設備が原因で第三者への賠償責任を補償する保険です。
- PL法により製品欠陥で他人に損害を与えた場合は無過失責任
- 実際の賠償額は78万円〜426万円と高額になるケースも
- 重大製品事故は年間1,000件超発生
- PL保険は賠償金だけでなく訴訟費用もカバー
- 施工中は請負業者賠償責任保険との併用が必須
しかし、PL保険だけではカバーしきれないリスクも存在します。
施工中の事故を補償する請負業者賠償責任保険や、施設内での事故を補償する施設賠償責任保険など、さまざまな保険を組み合わせることで、リスクを全体的に管理できます。
マルエイソリューションでは、こうした生産物賠償責任保険や工事保険の分野で、さまざまなプランを幅広くご案内可能です。
お客様のニーズに応じて最適な保険を提案できるだけでなく、安価での乗り換えやお得なパッケージプランも多数取り揃えており、多くのお客様に継続的にご利用いただいています。
また、プラン選定からアフターサポートまで、保険に関する専門知識を持ったスタッフが徹底的にサポートしますので、安心してご利用いただけます。
生産物賠償責任保険やその他の工事保険についてさらに詳しく知りたい方、または最適な保険プランをお探しの方は、ぜひ、お気軽にお問い合わせください。
詳細な説明やお見積りも無料で提供いたします。