投稿日:2025.05.29 最終更新日:2025.12.11
解体工事の保険は「見直し」で大きく変わる!保険料節約と補償を手厚くする方法
解体工事は、数ある建設工事の中でも、特に事故のリスクが高いと言われています。
建物を取り壊していくという作業には、どうしても予測しきれない危うさや、隣接する建物への影響なども考えなくてはいけないからです。
解体工事を営む経営者の方や、現場の安全管理を担う責任者の皆様は、「うちの会社の保険、本当にこれで万全と言えるだろうか」「毎月の保険料、少しでも負担を軽くする方法はないものか」といったお悩みや疑問を持っているのではないでしょうか。
この記事では、そうした解体工事特有の高いリスクを改めて整理し、本当に知っておくべき保険の知識とその活用方法、そして保険料の負担を減らすための具体的なノウハウを、保険の専門家が分かりやすくお伝えします。
- 解体工事で実際に起きている事故と具体的な賠償金額
- 解体工事で必要な保険の種類と補償内容(補償限度額・免責事項を含む)
- 【業者向け】保険料を削減しながら補償を手厚くする具体的な方法
- 万が一の事故発生時に保険金をスムーズに請求する手順
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目次
解体工事ではどんな事故が起こる?

建設業は、全産業の中で最も労働災害の発生率が高い業種の一つとされています。
特に、解体工事の現場では、高所での足場作業、大型重機の使用、構造物が不安定で落下・崩壊しやすいなどのことから、他の建設工事と比較してもリスクが高いとされています。
主な事故としては、高所からの墜落・転落、重機との接触や挟まれ、飛来物・落下物によるものが挙げられます。
実際に、解体工事現場で発生した事故事例をご紹介します。
事例①:解体後に残された構築物が原因で地盤改良工事時に不具合
ビルの解体工事後、地中に残っていた構築物が撤去されず、そのまま地盤改良工事を行った結果、杭に不具合が生じてしまいました。
損害額:約2,440万円
解体時のチェックミスによる撤去漏れが原因で、後続の地盤改良工事に支障が生じました。請負業者賠償責任保険から約2,440万円の保険金が支払われ、残置物撤去および杭の補修費用が補填されました。
事例②:隣家の擁壁崩落で約883万円の支払い
解体作業中に隣接する住宅の擁壁(コンクリート壁)にひびが入り、最終的に崩落してしまった事故です。当事者間で解決できず裁判に発展しました。
損害額:約883万円(擁壁修理費約33万円+弁護士費用約850万円)
解体作業の衝撃や手順ミスにより隣家擁壁の構造に負荷がかかり、建物を支えるべき部分の撤去タイミングの誤りなど施工上の過失が指摘されています。元請業者が民法上の不法行為責任を問われ、賠償責任保険から保険金が支払われることで解決しました。
事例③:解体現場での大割圧砕機交換作業中、機械が落下し破損
解体作業中、大割圧砕機の交換作業を行っていた際に、機械が誤って落下する事故が発生しました。作業手順の不徹底や固定不良が原因となり、吊り上げ途中でバランスを崩して地面に落下しました。
損害額:約413万円
事例④:解体工事現場からの破片飛散による隣家への損害
解体工事現場から飛散した破片等が、隣家のフェンス等に当たり、傷をつけてしまいました。
損害額:約21万円
このように、解体工事での損害賠償は数百万円から数千万円規模に及ぶことも珍しくありません。
解体工事は事故が多発している!保険による備えの重要性

「自社に限って事故なんて…」と、思われるかもしれませんが、さきほど触れたように、解体工事は他の建設工事と比較しても事故のリスクが際立って高いのが現実であり、毎年、残念ながら多くの労働災害や物損事故が発生しているのが現実です。
厚生労働省の統計によると、2024年(令和6年)の労働災害による死亡者数は全産業で746人、そのうち建設業が232人と最も多く、全体の約31.1%を占めています。建設業は他産業に比べ死亡事故が突出して多い状況です。
工事の中でも事故が起きやすいのは解体工事業。
解体工事で事故が起こりやすい背景には、主に次のような特性があります。
- 建物劣化、アスベスト、地中埋設物などの予測困難な要素
- 常に変化する作業環境
- 粉塵の発生、大きな騒音や振動といった作業に付随する影響
- 重量物の取り扱い、不安定な構造物の解体
これらの「見えないリスク」や「対応の難しさ」が、事故の発生確率を高めているのです。
こうした避けられないリスクから会社と従業員の双方を守るためには、やはり保険への加入が欠かせません。
もし保険に加入していなければ、万一の事故発生時には、高額な損害賠償請求や行政処分、訴訟対応など、事業運営に大きな影響を及ぼす可能性があります。
解体工事のリスクをゼロにすることはできませんが、その被害を最小限に抑えられるのが保険です。
解体工事で必要な保険の種類と補償範囲
解体工事では、「対物賠償責任保険」「対人賠償責任保険」、そしてこれらをまとめてカバーできる「請負業者賠償責任保険」が特に重要です。
対物賠償責任保険

工事中の対物事故によって発生した損害賠償責任を補償します。
つまり、解体作業が原因で、他人の建物や車、設備といった「モノ」に損害を与えてしまった場合に保険金が支払われる仕組みです。
被害物の修理費用や、元通りにするための再調達費用といった損害賠償金はもちろん、場合によっては訴訟にかかる費用などもカバーされます。
重機を使用する解体工事では隣接財物への損害リスクが高いため、この保険でしっかりとカバーすることが大切です。
対人賠償責任保険

工事中の対人事故による損害賠償責任を補償します。
解体作業が原因で第三者の身体に損害を与えた(ケガ・死亡)場合に保険金が支払われます。
治療費、慰謝料、逸失利益(事故がなければ得られたはずの収入)、後遺障害補償などが含まれ、死亡事故の場合はご遺族への補償も対象です。
こちらも、訴訟費用などがカバーされる場合があります。
人身事故は、特に高額な賠償責任が発生しやすいため、カバーしておきたいところです。
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請負業者賠償責任保険

解体業者にとって最も基本となる保険です。工事中の対人事故・対物事故による第三者への損害賠償責任をまとめてカバーできるため、対人賠償と対物賠償を一つの契約で効率よく備えることができます。
請負業者賠償責任保険とは?補償内容・特約・加入の必要性をわかりやすく解説
工事現場では、作業中に工具が落下して通行人にケガを負わせたり、重機の操作ミスで隣接する建物や車両を損傷させてしまう事故が起こりえます。こうした「第三者への損害」が発生した場合、施工業者は法律上の賠償責任を負うことになります。 民法第709条では「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利
補償される範囲と免責事項
請負業者賠償責任保険に加入していても、すべての事故が補償されるわけではありません。
【補償される主な事故】
- 第三者への人身事故:治療費・慰謝料・逸失利益など
- 第三者への物損事故:隣家の外壁損傷、駐車車両への損害、道路・公共施設の破損など
- 法律上の賠償責任費用:訴訟費用・弁護士費用など
【補償されない主な事故(免責事項)】
- 作業対象物そのもの:解体中の建物自体の損壊
- 地盤沈下・地中障害:標準契約では免責とされることが多い
- 受託物の損壊:リース機材の破損
- 作業員の労災:労災保険の対象
- 騒音・振動・粉じん:公害的被害は通常対象外
- 法令違反や重過失:故意・重大な過失による損害
これらの免責事項を理解しておくことで、万が一の際に「補償されない」というトラブルを避けることができます。特に地盤沈下や騒音・振動は標準契約では免責とされるため、必要に応じて特約の追加を検討してください。
解体工事の保険と免責|「保険が効かない」5つのケースと対策
「解体工事の作業対象である建物そのものは、多くの保険で補償の対象外になる」 実は、解体事業者が加入する賠償責任保険には、このように補償が適用されない「免責事項」がいくつも定められています。 このルールを知らないまま万が一の事態が起きれば、損害が自己負担となり、会社の経営に大きな影響を与えることも
労災保険の法的義務
労働者災害補償保険(労災保険)への加入は法律で義務付けられています(労働者災害補償保険法第3条)。
従業員を雇用している場合、労災保険への加入は必須です。さらに、労働安全衛生法により、事業者は労働者の安全と健康を確保するための措置を講じる義務があります。
国の労災保険だけでは賄いきれない部分をカバーするため、民間の労災上乗せ保険(業務災害総合保険など)の検討もおすすめします。
解体工事の保険料を削減する方法
保険料の負担を減らすには、以下の4つの方法があります。
- 団体割引の活用
- 複数プランの比較検討
- 補償内容の最適化
- 安全対策による割引制度
①団体割引の活用
所属する建設業協会などを通じた加入で、割引が適用される場合があります。個別加入に比べ10~30%以上安くなるケースも。(条件により異なります)
②複数プランの比較検討
同じ補償でも保険料は保険会社やプランで数万円単位で異なります。相見積もりで最適なプランを探しましょう。
③補償内容の最適化
免責金額(自己負担額)の設定や、自社の事業規模や工事内容に照らして、本当に必要な補償への絞り込みを検討しましょう。ただし、解体工事特有のリスクに対する備えを安易に削らないよう注意が必要です。
④安全対策による割引制度
安全管理への取り組みが、保険料割引の対象になるケースもあります。また、無事故を継続することで、更新時の保険料が割安になることも期待できます。
これらの方法を上手く組み合わせることで、保険料の負担を大きく減らせる可能性があります。
実際に、私たちマルエイソリューションにご相談いただいたお客様の中には、保険全体の見直しを行った結果、年間の保険料を約80%削減できた(年間50万円→10万円台)というケースもあります。
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事故発生!保険金請求をスムーズに進めるための手順

解体工事の現場で万が一、物損事故や人身事故が発生してしまった場合の、保険金請求の流れをご紹介します。
①初期対応
人命の安全確保を最優先し、二次災害を防ぐための措置(作業中止、立入禁止など)をすぐに行います。重大な事故の場合は、警察や消防への通報も必要です。
②証拠の確保
事故現場の状況を示す写真や動画は、保険金請求において極めて重要な証拠となります。損害を受けた箇所だけでなく、現場全体の状況が分かるように記録しましょう。
③保険会社へ連絡
保険証券や契約内容が分かる書類を手元に用意し、できるだけ早く保険会社または保険代理店に事故の第一報を入れます。連絡が遅れると、保険金の支払いに影響が出る可能性があります。
④損害の確認
物損事故の場合、修理が必要であれば、保険会社の指示に従いながら、可能であれば複数の業者から見積もりを取りましょう。保険会社の承認を得ずに勝手に修理を進めないように注意が必要です。
⑤示談交渉
対人事故や対物事故で、第三者との間で損害賠償に関する話し合い(示談交渉)が必要になる場合があります。示談が成立し、必要な書類を保険会社に提出すれば、保険金が支払われます。
特に、事故直後の現場の状況を克明に記録した写真や動画は、後からでは決して手に入れることのできない重要な証拠です。
保険金支払いまでの期間
保険金が実際に支払われるまでの期間は、事故の内容や損害の規模によって異なります。
- 物損事故:通常30日~60日
- 人身事故:示談成立後、60日~90日
- 複雑な案件:数ヶ月~1年以上かかることも
まとめ:解体工事の保険は適切な備えとコスト削減の両立が可能
解体工事は、建設業の中でも特に事故リスクが高い業種です。適切な保険への加入は、今後解体工事業を行っていくにあたって不可欠な備えとなります。
- 解体工事の賠償額は数百万円〜数千万円規模に及ぶ
- 請負業者賠償責任保険が基本、労災保険は法的義務
- 地盤沈下・騒音振動・受託物損壊などは免責対象
- 団体割引や相見積もりで保険料80%削減も可能
解体工事の保険は、単に加入するだけでなく、補償内容と保険料のバランスを見直すことで大幅なコスト削減が可能です。年に一度は保険内容を見直し、自社に最適な補償を確保しましょう。
- コスト削減に自信あり! 独自の団体割引や保険会社ごとのプラン比較により、保険料の大幅な削減を目指せます。
- 豊富な選択肢から最適プランをご提案 国内外の主要保険会社・40以上の商品の中から、最適な補償プランを厳選します。
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