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組立保険で備えられる工事リスクとは?補償外のケースもあわせて解説

工場の生産ラインや発電所の設備、プラント配管などの組立工事では、1台数千万円規模の機械をクレーンで吊り、狭いスペースに据え付ける場面が珍しくありません。

ひとつのミスで高額な設備を損傷し、工期や取引先との関係にまで影響が出るリスクを常に抱えています。

例えば、試運転中の振動で内部部品が破損したり、据付作業中の接触でケーシングを歪ませてしまった場合、誰がどこまで費用を負担するのかが問題になります。

「建設工事保険で足りるのか」「組立保険ではどこまで補償されるのか」「どんな事故が補償外になりやすいのか」といった疑問を持つ方も多いはずです。

組立保険は、こうした機械設備・プラントの組立・据付工事中から試運転までのあいだに起きる物的損害をカバーするための工事保険です。本記事では、実際の事故例や約款に基づき、現場で押さえておきたい補償範囲と注意点を具体的に整理します。

この記事でわかること
  • 組立保険の補償内容と実際の事故事例
  • 補償される条件・されない条件の明確な区分
  • 試運転期間中の補償範囲
  • 法令で求められる安全管理体制
  • 保険金請求時の注意点
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この記事を書いた人
後藤 文男

国内大手損害保険会社で法人営業職を経験後、2013年に入社。補償内容の見直しや保険を活用した経費削減の提案など、損害保険分野のリスクコンサルを得意としている。
【保有資格】
・ファイナンシャルプランナー(CFP)
・一級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)

組立保険:機械設備の据付・組立工事中の損害を補償

組立保険は、工事保険のうち物的損害を補償する保険の一種であり、機械設備やプラントの組立工事に特化した保険です。建設工事保険が「建物」を対象とするのに対し、組立保険は主に「設備」や「構造物」を対象とします。具体的には、以下のような工事が対象となります。

  • 各種プラント工事(石油、ガス、化学、発電所など)
  • 生産設備の設置(工場の生産ライン、産業用ロボット)
  • 電気・通信設備の設置(発電機、変圧器、アンテナ、鉄塔)
  • 大型構造物の組立(ガスタンク、サイロ、鋼橋の架設)
  • ビル設備の据付(エレベーター、エスカレーター、大型空調機)
  • その他(遊園地の遊具設置、立体駐車場の組立など)

この保険は、工事現場での不測かつ突発的な事故によって、工事の目的物や持ち込んだ機材、資材に損害が生じた場合に、その損害を補償します。

また、組立工事においては法令で厳格な安全管理体制が求められています。

建設業法第26条により、工事ごとに主任技術者または監理技術者を現場に配置し、施工の技術管理を行うことが義務付けられています。

参考:建設業法第26条(e-gov法令検索)

また、クレーンを使用する作業では、クレーン等安全規則により、荷を吊ったまま運転席を離れることが禁止されるなど、厳格な安全基準が定められています。

参考:クレーン等安全規則(e-gov法令検索)

さらに、労働安全衛生法では、高所作業や足場組立て時の作業主任者の選任、墜落防止措置など、安全作業手順を講じることが事業者に義務付けられています。

参考:労働安全衛生法(e-gov法令検索)

このように法令で厳格な管理が求められているにもかかわらず、組立工事では事故が発生するリスクがあるため、保険による備えが重要となります。

組立保険の一般的な補償内容

組立保険には、補償されるケースと補償されないケースがあります。ここでは、主に補償されるリスクについて詳しく説明します。

組立保険の補償対象

まずは、組立保険で補償される具体的なケースについて説明します。

火災や爆発による損害

工事中に発生する火災や爆発による損害は、組立保険の主要な補償対象です。

たとえば、溶接作業中の火花が原因で火災が発生し、設備が損壊した場合、保険が修理費用や損害額をカバーします。このような突発的な事故は特にリスクが高く、保険による補償が重要です。

自然災害(天候)による損害

台風や豪雨、洪水、暴風雨などの自然災害による損害もカバーされます。屋外での大型機器の設置作業中に、豪雨が原因で機材が損壊したケースなどの損害を補償します。こうした天災は予測が難しいため、工事保険での備えが必要です。

作業ミスや事故による損害【実際にあった事故事例】

作業員のミスによる機器の破損や、組立作業中の事故による損害も対象です。

厚生労働省の「職場のあんぜんサイト」では、実際に発生した労働災害事例が公開されています。例えば、以下のような組立工事に関連する事故が報告されています。

 

機械設備の組立作業中の荷落下事故

工場の機械設備を組み立てる際、天井クレーンで吊り上げた部品のベルトが切れて荷が落下し、作業員が負傷した。

自動化装置用フレーム(約1.4t)を横倒しにする作業中、玉掛けに使用していた繊維ベルト1本が突然破断したことが原因です。

倒れてきたフレームに作業員が激突し被災しました。適切な玉掛け用具の選定と作業手順の確認不足が要因として考えられます。

出典:職場のあんぜんサイト(厚生労働省)No.100260

型わく支保工の組立作業中の倒壊事故

建設現場でコンクリート用の型わく支保工を組み立て中、クレーンで運搬した資材の重みで支保工が崩れ、作業員が死傷した。

移動式クレーンで型わく材の束(約790kg)を運搬中、既設の支保工が突然崩壊しました。

資材と共に作業員が落下し重傷を負い、直下の作業員は落下物に激突され死亡しました。積載荷重への配慮や立ち入り禁止区域の設定などが不十分だった可能性があります。

出典:職場のあんぜんサイト(厚生労働省)No.100507

これら2つの事例そのものは主に人身事故であり、被災した作業員への補償は労災保険などの領域です。

ただし、同じような状況で吊り荷や組立中の設備・型わくが大きく損壊した場合、その復旧費用は組立保険や建設工事保険の対象となり得ます。

現場では、人身は労災、設備の損壊は組立保険で備えるという役割分担を意識しておくことが大切です。

 

太陽光発電施設のパワコン取替工事で絶縁作業ミス、機器を破損

こちらは弊社で実際に保険対応を行った事例です。

太陽光発電施設のパワーコンディショナーを交換する工事の最中、絶縁作業の手順を誤り、パワコン本体が破損してしまいました。

精密機械の設置作業は複雑で、ちょっとしたミスで機器を壊すリスクも。パワコンが破損すると発電全体が停止し、大きな損失が発生します。

こうした事例からわかるのは、わずかな判断ミスや確認漏れが、人のケガだけでなく高額な設備損壊にも直結し得るという点です。

安全管理の徹底とあわせて、設備側の損害に備える組立保険を事前に用意しておくことが、現場全体のリスクを抑えるうえで重要になります。

試運転期間中の損害

組立保険の特徴として、試運転期間中の事故による損害も補償対象となります。機械やプラントの組立完了後、試運転を行う段階で発生した故障や損害についても、保険金が支払われます。

ただし、試運転期間の範囲については保険約款で明確に定められているため、契約時に確認することが重要です。

組立保険で補償されないケースとは?

組立保険には補償されないケースも存在します。ここでは、補償されない主なリスクと、それに対する対策について説明します。

地震・噴火・津波による損害

地震や噴火、津波といった大規模な自然災害は、通常の組立保険では補償対象外となることが一般的です。地震保険や火災保険の地震特約を併用することが推奨されます。

老朽化や自然消耗による損害

老朽化や経年劣化、自然消耗による損害も補償対象外です。たとえば、設備のサビや機械の摩耗による故障は、保険でカバーされません。設備の定期メンテナンスや予防的な修理が必要です。

故意や重大な過失による損害

故意に引き起こされた破損や、工事関係者による重大な過失も免責事項に該当します。適切な教育や管理体制を整えることで、これらのリスクを抑える必要があります。

あわせて検討したい工事保険

組立保険は、機械設備やプラントの組立工事におけるリスクをカバーする重要な保険ですが、それだけでは工事全体のすべてのリスクを補償することは難しい場合があります。工事内容に合わせて他の保険を併用することで、あらゆるリスクに備えましょう。

建設工事保険

建設工事全般を対象とする建設工事保険は、建物や構造物の建設中に発生する損害を補償します。

たとえば、建築中の建物が自然災害によって損壊した場合、補償が適用されます。組立保険が主に機械設備やプラントのリスクを対象とするのに対し、建設工事保険は建物自体や現場全体の補償をカバーするため、両者を併用することで工事全体の安全性を高めることができます。

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建設工事に携わる皆さんにとって、建設途中の建造物・資材が壊れたり、傷ついたり、はたまた盗まれてしまったり…といった「もしも」の状況は案外珍しいことではありません。 実際に、国土交通省の建設工事事故データベースによると、令和元年から令和4年度にかけて約1,600件の建設工事事故が発生しています。

土木工事保険

土木工事保険は、道路や橋梁、トンネルなどの土木(インフラ)工事におけるリスクを対象とします。

これには地盤沈下や地すべりなど、土木工事現場特有のリスクが含まれます。組立工事と並行して基礎工事が行われる際に、土木工事保険を組み合わせることで、幅広いリスクに備えることが可能です。

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請負業者賠償責任保険

請負業者賠償責任保険は、物的損害の補償ではなく、第三者に損害を与えた場合の賠償責任を補償します。

工事中に落下物が通行人に怪我をさせた場合や、周囲の建物を損傷させた場合に適用されるため、予期しない事故による損害賠償のリスクを軽減できます。

組立工事では、クレーン作業による落下物のリスクなど、第三者への損害リスクも高いため、組立保険とあわせて加入することが推奨されます。

マルエイソリューションが組立工事のリスクを徹底カバーします

組立保険は、機械設備やプラントの組立工事に特化した保険であり、工事中に発生する予期しないリスクを効果的にカバーします。

この記事では、組立保険の基本概要、必要性、補償内容、さらには他の工事保険との組み合わせについて解説しました。

実務で保険を検討するときは、次の4点を押さえておくと、工事内容に合った補償の組み立てや見直しがしやすくなります。

  • 組立工事に特化:火災・作業ミスなど、組立中の事故を補償。
  • 試運転中も補償:組立完了後の試運転リスクもカバーするのが大きな特徴。
  • 補償対象外も確認:地震・設計ミス・重過失などは対象外のため要注意。
  • 他の保険との併用が鍵:賠償責任保険などとの組み合わせで、備えは万全に。

いま加入している工事保険で、これらのポイントがどこまで押さえられているかを一度洗い出し、補償の重なりや抜けがないかを確認しておくことが大切です。

マルエイソリューションでは、こうし組立保険や工事保険の分野で、さまざまなプランを幅広くご案内可能です。

お客様のニーズに応じて最適な保険を提案できるだけでなく、安価での乗り換えやお得なパッケージプランも多数取り揃えており、多くのお客様に継続的にご利用いただいています。

また、プラン選定からアフターサポートまで、保険に関する専門知識を持ったスタッフが徹底的にサポートしますので、安心してご利用いただけます。

組立保険やその他の工事保険についてさらに詳しく知りたい方、または最適な保険プランをお探しの方は、ぜひ、お気軽にお問い合わせください。

詳細な説明やお見積りも無料で提供いたします。

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