解体工事でガス管を破損!ライフライン事故に保険は使える?電気・道路のケースも解説
「解体工事で、もし地中のガス管を壊してしまったら…」 「水道管や電気のケーブルを傷つけたら、保険はちゃんと使えるんだろうか?」
解体工事を予定している事業者様にとって、ライフラインの損傷事故は特に気になるリスクの一つではないでしょうか。
結論からお伝えすると、解体工事中に起こるライフラインの損傷事故は、多くの場合、基本的な工事保険で対応できます。
ただし、保険の契約内容によっては補償の対象外となるケースもあるため、注意が必要です。
この記事では、ライフラインの損傷で保険が「使える」ケースと「使えない」ケースの違い、そして失敗しないための保険選びのポイントを分かりやすく解説します。
- ライフライン損傷が保険で補償されるケースと金額
- 実際に発生した事故事例と具体的な賠償額
- 保険が使えない3つのケースと必要な特約
- 保険選びで確認すべき3つのチェックポイント
- ライフライン以外の解体工事リスクと対策
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目次
ライフライン損傷の保険補償は「地上」と「地中」で異なる

解体工事で、重機が地中のガス管を破損してしまった、建物の取り壊し中に上空の電線を切断してしまった——このようなライフライン損傷事故は、実は珍しくありません。
ただし、保険で補償されるかどうかは、損傷したライフラインが「地上にあるか」「地中にあるか」で大きく異なります。
では、このような事故に備えるには、どのような保険に加入すべきなのでしょうか。
基本は「請負業者賠償責任保険」だが、地中と地上で補償が異なる
ライフラインの損傷事故に対応する基本的な保険が「請負業者賠償責任保険」です。
この保険は、工事の遂行中に第三者の財物に損害を与え、法律上の賠償責任を負った場合に、その賠償金をカバーすることを目的としています。
ただし、重要な注意点があります。地上のライフライン(電線・道路施設など)は標準契約で補償されますが、地中のライフライン(ガス管・水道管など)は特約を付けない限り補償されないのが一般的です。
法的根拠:民法上の賠償責任
解体工事でライフラインを損傷した場合、施工業者は民法に基づき賠償責任を負います。
具体的には、民法第709条で「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」と定められています。
また、民法第715条では「ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う」と使用者責任が定められています。
ガス管や水道管は、いうまでもなくガス会社や水道局が所有する「第三者の財物」です。
したがって、工事中にこれらを破損してしまった場合は、この保険の基本的な補償対象に含まれます。
万が一保険に未加入の状態で事故を起こしてしまうと、民法上の賠償責任にもとづき、施工業者が賠償金を全額自己負担することになってしまいます。
多くの保険には、被害者との示談交渉サービスも付帯しており、事故後の煩雑な対応をスムーズに進める上でも大きな助けとなります。
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【標準契約で補償】地上のライフライン損傷(電線・道路施設など)
まず、標準的な請負業者賠償責任保険で補償されるライフライン損傷から見ていきましょう。
解体工事の現場で起こりがちな事故には、主に以下のようなものがあります。
電気・通信ケーブルの切断
建物の取り壊し中に、重機のアームや飛散した解体材が上空の電線や通信ケーブルに接触し、切断してしまうケースです。
広範囲にわたる停電や通信障害を引き起こし、周辺の家庭や企業に大きな影響を与える可能性があります。
これらは電力会社や通信事業者が所有する「第三者の財物」にあたり、標準的な請負業者賠償責任保険で補償されます。
道路・付属設備の損壊
重機の搬入・搬出時や作業中の移動によって、公道のアスファルトや縁石、ガードレール、カーブミラーなどを損傷させてしまうケースも少なくありません。
道路は国や自治体が管理する公共物であり、その損害は賠償責任の対象です。
たとえ軽微な損傷であっても、原状回復には専門的な工事が必要となり、これらも標準的な保険でカバーされます。
【補償事例】道路施設の損傷で保険が使われたケース
地上のライフライン・道路施設の損傷では、復旧費用が高額になるケースも少なくありません。
実際の事例を見てみましょう。
道路施設を破損し約112万円の復旧費用
ビル解体工事中、重機が誤って公道の路肩ブロックに衝突・破壊した事故です。
損害額:約112万円
路肩ブロックおよび付帯するガードレールの一部が損傷し、通行車両や歩行者の安全確保のため工事は一時中断されました。自治体が復旧工事を実施し、費用相当額を施工業者に請求。標準的な請負業者賠償責任保険により全額賠償金が支払われました。
重機オペレーションの過誤が原因で、狭隘な作業区域内でバックホーを旋回中に後方確認が不十分で、境界を越えて路肩設備に接触しました。
このように、地上のライフラインや道路施設の損傷は、標準的な請負業者賠償責任保険で補償されます。
【要注意】地中のガス管・水道管は標準契約では補償されない
一方で、地中に埋設されたライフラインの損傷は、標準契約では補償されないケースが多いという点に注意が必要です。
掘削作業中に、地中に埋設されたガス管や水道管を重機で破損させてしまうケースは、解体工事で最も頻繁に起こりうるトラブルの一つです。
ガス漏れや断水を引き起こすだけでなく、引火による爆発など二次災害のリスクもあり、復旧費用は高額になりがちです。
しかし、多くの保険会社では、地中埋設物の損壊は標準契約では免責(補償対象外)とされています。
地中のガス管・水道管を補償するためには、「地中埋設物損壊補償特約」といったオプション特約を付帯させることが必須です。
この特約の詳細や、保険が使えない具体的なケースについては、次の章で詳しく解説します。
ライフライン損傷でも請負業者賠償責任保険が使えない3つのケース

前章で解説したように、地上のライフラインは標準契約で補償されますが、地中のガス管・水道管は特約が必要です。
さらに、それ以外にも保険が使えないケースはあります。
具体的には、以下の3つのケースです。
- 地下埋設物の損壊(特約なしの場合)
- 工事完了後の事故
- 罰金や休業補償などの間接的な損害
ケース1:地下のガス管・水道管の損壊【地中埋設物損壊特約が必須】

前章でも触れましたが、地中に埋設されているライフラインの損壊は、もっとも注意が必要なケースです。
標準的な請負業者賠償責任保険の契約では、「地中にあるもの」の損壊は補償の対象外(免責)とされているケースが少なくありません。
保険約款上の免責事項
主要保険会社の請負業者賠償責任保険約款では、以下のような免責事項が定められています。
補償されない損害(主な免責事項):
- 地下埋設物の損壊事故:地中に埋設されたガス管・水道管・ケーブル等への損害は、標準契約では補償対象外
- 別途「地中埋設物損壊補償特約」を付けない限り保険金は支払われない
保険料を安くするために、「地下埋設物損壊不担保特約」が自動的にセットされている商品もあるほどです。
この事実を知らずに契約していると、いざ地中のガス管や水道管を破損してしまった際に、保険金が支払われず、高額な修理費用を全額自己負担するという事態になりかねません。
このリスクを回避するためには、「地中埋設物損壊補償特約」といったオプションの特約を付帯させることが欠かせません。
自社の保険証券を確認し、この特約が付いているか、あるいは免責となっていないかを必ずチェックしましょう。
地中埋設物の保険について詳しく知りたい方は下記の記事もあわせてご覧ください。
解体工事の保険と免責|「保険が効かない」5つのケースと対策
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ケース2:工事完了後のガス漏れ・漏水【PL保険の領域】

請負業者賠償責任保険がカバーするのは、あくまで「工事中」の事故に限られます。
では、工事が完了し、建物を引き渡した後に施工ミスが原因で事故が起きた場合はどうなるのでしょうか。
- 解体工事完了後、ガス管の接続ミスが原因でガス漏れが発生した。
- 埋め戻した水道管から、後日になって漏水が始まった。
このような「工事完了後」の事故は、請負業者賠償責任保険の対象外です。
こうしたリスクに対応するのは、「生産物賠償責任保険(PL保険)」という別の保険の役割となります。
請負業者賠償責任保険とPL保険は、補償する期間(工事中か、工事後か)が明確に分かれているのです。
この二つをセットで加入しておかなければ、引き渡し後に発覚した事故に対しては無保険状態になってしまう、ということを覚えておきましょう。
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ケース3:復旧費用以外の「罰金」や「休業補償」

賠償責任保険が支払う保険金は、原則として損壊した「モノ」の修理費用など、法律上の賠償責任を負う損害に限定されます。
そのため、事故が原因で発生したとしても、以下のような費用は補償の対象外となるのが一般的です。
罰金・科料など
ガス管破裂事故などで、行政から法令にもとづき罰金や科料を科されたとしても、その金額は保険ではカバーされません。
保険の約款にも、制裁金などは支払対象外であることが明記されています。
休業補償
事故の影響で近隣の店舗が営業できなくなった場合の営業損失(休業損害)も、原則として対象外です。
特に、物理的な損害をともなわない「工事がうるさくて客足が減った」といったクレームによる逸失利益は補償されません。
保険はあくまで直接的な損害を補うものであり、事業活動の停止にともなう間接的な損害や、行政罰まではカバーできない、ということを理解しておく必要があります。
ガス管・水道管などのライフライン損傷に備える保険選び3つのチェックポイント
使えるケース・使えないケースを理解したところで、次は保険選びです。
失敗しないために、以下の3つのポイントは必ず押さえておきましょう。
- 万一の事態を想定した十分な補償額か
- 地下埋設物など必須の特約を見落としていないか
- 保険金不払いの原因となる告知義務違反はないか
この機会に、自社の保険がこれらのポイントを満たしているか、ぜひ確認してみてください。
チェック1:補償額は十分か?ライフライン損傷は高額になりやすい

まず確認すべきは、補償される金額の上限、すなわち「保険金額」です。
地上の電線や道路施設、地中のガス管や水道管といったライフラインの損傷は、単純な修理だけでも数十万〜数百万円の費用がかかります。
さらに、ガス管破損による引火や爆発といった二次災害、あるいは人身事故につながった場合には、賠償額が数千万円〜数億円規模に膨らむ可能性も考えられます。
一般的な工事保険では、1事故あたりの補償限度額を1億円〜3億円に設定するプランが多く見られます。
自社の事業規模や請け負う工事の内容を考え、万一の事態を想定しても十分に対応できる補償額が設定されているか、必ず確認しましょう。
保険料を抑えたいからと補償額を低く設定しすぎると、いざという時に保険が役に立たない、ということにもなりかねません。
チェック2:地下のガス管・水道管・電線に必須の特約は見落とさない

次に、保険証券の細かい文字で書かれた「特約」や「免責事項」の欄を丁寧に確認します。
特に、ライフライン損傷のリスクにおいて、以下の点は見落としがちな重要ポイントです。
地下埋設物の補償は有効か?
前述の通り、「地下埋設物損壊不担保特約」などが付いているか、必ず確認しましょう。
解体工事において、この補償がないのは大きなリスクとなりかねません。
免責金額(自己負担額)はいくらか?
「1事故につき10万円は自己負担」といった免責金額が設定されている場合があります。
この金額が高いと、小規模な事故では保険を使えないことになります。
自社の体力に合わせて、的確な免責金額を設定することが重要です。
保険は「契約内容がすべて」です。
口頭での説明だけでなく、証券に記載された文言を正しく理解し、自社に必要な補償が確保されているかを見極めることが、リスク管理の鍵となります。
チェック3:契約時の告知内容に誤りはないか?

最後に、意外と見落とされがちなのが「告知義務」の確認です。
告知義務とは、保険を契約する際に、事業の内容や年間売上高、過去の事故歴などを、保険会社に対して正しく申告する義務のことです。
契約時の告知内容を今一度確認し、実態と相違がないかチェックしましょう。
たとえば、以下のようなケースは告知義務違反とみなされる可能性があります。
- 保険料を安くするために、実際にはリスクの高い解体業を営んでいるにもかかわらず、比較的リスクの低い業種として申告している
- 事業規模が拡大したのに、当初の契約内容のまま更新している
- 過去の事故歴を正確に伝えていない
告知義務違反が発覚すると、保険会社は契約を解除でき、たとえ事故が起きても保険金は一切支払われません。
保険会社は保険金を支払う際に詳細な調査をおこなうため、虚偽の申告はいずれ必ず発覚します。
契約時には、事業の実態を正直かつ正確に伝えることが、最終的に自社を守ることにつながります。
ライフライン以外も!解体工事の重要リスクと「保険が使えない」ケース
解体工事に潜むリスクは、ライフラインの損傷だけではありません。
近隣トラブル、アスベスト、地中埋設物といった問題も、事業に影響を与えうるリスクです。
そして、これらのリスクの多くは、基本的な請負業者賠償責任保険だけではカバーしきれない、という共通点があります。
具体的には、以下の3つのケースが挙げられます。
- 【近隣トラブル】騒音・振動による無形の損害
- 【アスベスト】賠償責任保険は原則免責。ただし例外的な専用保険も
- 【地中埋設物】賠償責任ではなく「コスト」と見なされる発見・撤去費用
【近隣トラブル】騒音・振動クレームには「賠償責任保険」の限界も

解体工事と近隣トラブルは、しばしば問題となります。
特に多いのが、騒音や振動に対するクレームです。
もし、工事の振動が原因で「隣の家の壁にひびが入った」というように、明確な物的損害が発生した場合は、その修理費用は請負業者賠償責任保険で補償されます。
しかし、問題は物的損害をともなわないケースです。
「工事がうるさくて眠れない」「精神的な苦痛を受けた」といった理由で慰謝料を請求されたとしても、原則として保険金の支払いは困難です。
賠償責任保険は、あくまで物理的な損害を補うためのものであり、無形の被害まではカバーしきれないのが実情です。
保険だけに頼るのではなく、事前の挨拶回りや防音シートの設置といった、トラブルを未然に防ぐ努力が何よりも重要になります。
解体工事の保険で騒音・振動は補償されない?免責の理由と本当に必要な備えとは
「解体工事の騒音クレームは、保険で対応できるはずだ」 もし、そう考えているのであれば注意が必要です。 結論からいうと、解体工事にともなう騒音・振動・粉塵といった近隣トラブルは、原則として保険の適用対象外です。 そう聞くと、「一体何のための保険なのか」と疑問に思われるかもしれません。 この記事
【アスベスト】賠償責任保険は原則免責。ただし例外的な専用保険も

アスベスト(石綿)は、解体工事において特に注意が必要な有害物質です。
そして、このアスベストに起因する損害は、ほぼすべての請負業者賠償責任保険で「補償対象外(免責)」と定められています。
健康被害の範囲や期間の予測が極めて困難なため、保険会社がリスクを引き受けきれないのです。
そのため、万が一アスベストを飛散させてしまい、近隣住民に健康被害を与えたとしても、通常の保険では補償されないということです。
ただし、一部の保険会社では例外的に、AIG損保の「アスベスト飛散事故補償特約」のような専門の保険や、損保ジャパンの「アスベストコストキャップ保証」のような、想定外の除去費用をカバーする保証制度が提供されています。
アスベストに関する詳細は下記記事もあわせてご覧ください。
解体工事のアスベスト保険|補償範囲と注意点【2025年最新版】
解体工事におけるアスベスト対策について、「うちの会社は、ちゃんと工事保険に入っているから大丈夫」とお考えの場合は、一度お手元の保険証券を確認してみてください。 その保険証券の小さな文字で書かれた部分に、「アスベスト(石綿)による損害は補償の対象外」という一文が見つかるかもしれません。 実は、多く
【地中埋設物】想定外の発見・撤去費用は「賠償責任保険」の対象外

工事を進めていく中で、図面にはなかった古い建物の基礎や浄化槽、コンクリートガラといった地中埋設物が発見されることもあります。
これらの撤去・処分には、時として数百万円単位の追加費用が発生しますが、この費用は請負業者賠償責任保険の対象外です。
なぜなら、これは第三者に損害を与えた「賠償責任」ではなく、あくまで自社の工事を進める上で発生した「コスト」と見なされるためです。
この地中埋設物の撤去出費は、完全に自己負担となります。
このリスクに備えるためには、民間の「地中埋設物包括保証」といった専門の保証サービスを利用するか、施主との契約段階で「想定外の埋設物が発見された場合は、追加費用を請求する」旨を明確に合意しておくといった対策が必要になります。
解体工事の保険と免責|「保険が効かない」5つのケースと対策
「解体工事の作業対象である建物そのものは、多くの保険で補償の対象外になる」 実は、解体事業者が加入する賠償責任保険には、このように補償が適用されない「免責事項」がいくつも定められています。 このルールを知らないまま万が一の事態が起きれば、損害が自己負担となり、会社の経営に大きな影響を与えることも
まとめ:解体工事の保険は、ガス管・水道管などのリスクに両面で備えよう
本記事では、解体工事におけるガス管や水道管といったライフライン損傷のリスクについて、保険適用の可否を詳しく解説してきました。
結論として、基本的なライフラインの損傷は「請負業者賠償責任保険」でカバーできるものの、地下埋設物の損壊や工事完了後の事故など、特約がなければ補償されないケースも多いという点を押さえておくことが重要です。
- 請負業者賠償責任保険で、工事中の第三者への損害を補償
- 地中埋設物、工事後の事故、罰金・休業補償は免責になることが多い
- 補償額、必須特約、告知義務の3点を必ず確認
- ライフライン以外のリスク(近隣トラブル、アスベスト等)にも別途備えが必要
ライフラインの損傷リスクに正しく備えることは、企業の安定経営のために重要です。
「自社の保険は本当に大丈夫か?」と少しでも感じたら、ぜひ一度、専門家にご相談ください。
私たち株式会社マルエイソリューションは、工事保険のプロとして、お客様一社一社の状況に合わせた最適な保険プランをご提案し、コスト削減と安心の両立をサポートします。
ご相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。
- コスト削減に自信あり! 独自の団体割引(入会費・年会費無料の「マルエイ取引先協力会」など)や、保険会社ごとのプラン比較により、保険料の大幅な削減を目指せます。
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