
解体工事でガス管を破損!ライフライン事故に保険は使える?電気・道路のケースも解説

「解体工事で、もし地中のガス管を壊してしまったら…」 「水道管や電気のケーブルを傷つけたら、保険はちゃんと使えるんだろうか?」
解体工事を予定している事業者様にとって、ライフラインの損傷事故は特に気になるリスクの一つではないでしょうか。
結論からお伝えすると、解体工事中に起こるライフラインの損傷事故は、多くの場合、基本的な工事保険で対応できます。
ただし、保険の契約内容によっては補償の対象外となるケースもあるため、注意が必要です。
この記事では、ライフラインの損傷で保険が「使える」ケースと「使えない」ケースの違い、そして失敗しないための保険選びのポイントを分かりやすく解説します。
目次
ライフライン(ガス管・水道管など)の損傷は多くの場合、保険で補償可能
解体工事でのライフライン損傷事故のような第三者への損害は、多くの場合、事業者が加入する「請負業者賠償責任保険」によって補償されます。
基本は「請負業者賠償責任保険」でガス管・水道管の損傷をカバー
解体工事中に発生した第三者への損害を補償する、もっとも基本的な保険が「請負業者賠償責任保険」です。
この保険の目的は、工事の遂行中に他人の身体や財物に損害を与え、法律上の賠償責任を負った場合に、その賠償金をカバーすることにあります。
ガス管や水道管は、いうまでもなくガス会社や水道局が所有する「第三者の財物」です。
したがって、工事中にこれらを破損してしまった場合は、この保険の基本的な補償対象に含まれます。
万が一保険に未加入の状態で事故を起こしてしまうと、民法上の「使用者責任」にもとづき、施工業者が賠償金を全額自己負担することになってしまいます。
多くの保険には、被害者との示談交渉サービスも付帯しており、事故後の煩雑な対応をスムーズに進める上でも大きな助けとなります。
【補償対象】重機によるガス管破損、水道管・電線の切断、道路の損壊など
では、具体的にどのような事故が「請負業者賠償責任保険」の対象となるのでしょうか。
解体工事の現場で起こりがちなライフライン関連の事故には、主に以下のようなものがあります。
ガス管・水道管の破損
掘削作業中に、地中に埋設されたガス管や水道管を重機で破損させてしまうケースは、解体工事で最も頻繁に起こりうるトラブルの一つです。
ガス漏れや断水を引き起こすだけでなく、引火による爆発など二次災害のリスクもあり、復旧費用は高額になりがちです。
これらはガス会社や水道局といった専門事業者が管理しており、その損害賠償は保険でカバーされる典型的な例です。
電気・通信ケーブルの切断
建物の取り壊し中に、重機のアームや飛散した解体材が上空の電線や通信ケーブルに接触し、切断してしまうケースです。
広範囲にわたる停電や通信障害を引き起こし、周辺の家庭や企業に大きな影響を与える可能性があります。
これらのインフラも電力会社や通信事業者が所有する「第三者の財物」にあたるため、修理費用は保険の補償対象となります。
道路・付属設備の損壊
重機の搬入・搬出時や作業中の移動によって、公道のアスファルトや縁石、ガードレール、カーブミラーなどを損傷させてしまうケースも少なくありません。
道路は国や自治体が管理する公共物であり、その損害は賠償責任の対象です。
たとえ軽微な損傷であっても、原状回復には専門的な工事が必要となり、保険が役立ちます。
これらのように、工事に伴い発生した第三者への物理的な損害が、保険の対象となります。
【補償事例】道路の復旧費用が保険で支払われたケース
ライフラインの中でも、特に公共性の高い「道路」を損傷させてしまった場合、その影響は広範囲に及び、復旧費用も高額になりがちです。
しかし、こうした大きなケースでも、請負業者賠償責任保険が役割を果たします。
実際に弊社でも、重機の操作ミスにより道路を損傷してしまい、保険のお支払いをした事例がありました。
事故の規模によっては、賠償額が高額になるケースも考えられます。
こうした万一の事態に備え、十分な補償が可能な保険に加入しておくことが大切です。
要注意!ガス管・水道管の損傷でも請負業者賠償責任保険が使えない3つのケース
「請負業者賠償責任保険に入っていれば、ライフラインの事故はすべて安心」と考えるのは、実は少し危険です。
この保険には、補償の対象外となる「免責事項」が定められており、知らずにいると想定外の事態につながる可能性があります。
具体的には、以下の3つのケースです。
- 地下埋設物の損壊
- 工事完了後の事故
- 罰金や休業補償などの間接的な損害
ケース1:地下のガス管・水道管の損壊【地中埋設物損壊特約が必須】
もっとも注意が必要なのが、地中に埋設されているライフラインの損壊です。
実は、標準的な請負業者賠償責任保険の契約では、「地中にあるもの」の損壊は補償の対象外(免責)とされているケースが少なくありません。
保険料を安くするために、「地下埋設物損壊不担保特約」が自動的にセットされている商品もあるほどです。
この事実を知らずに契約していると、いざ地中のガス管や水道管を破損してしまった際に、保険金が支払われず、高額な修理費用を全額自己負担するという事態になりかねません。
このリスクを回避するためには、「地中埋室物損壊補償特約」といったオプションの特約を付帯させることが欠かせません。
自社の保険証券を確認し、この特約が付いているか、あるいは免責となっていないかを必ずチェックしましょう。
地中埋設物の保険について詳しく知りたい方は下記記事もあわせてご覧ください
ケース2:工事完了後のガス漏れ・漏水【PL保険の領域】
請負業者賠償責任保険がカバーするのは、あくまで「工事中」の事故に限られます。
では、工事が完了し、建物を引き渡した後に施工ミスが原因で事故が起きた場合はどうなるのでしょうか。
- 解体工事完了後、ガス管の接続ミスが原因でガス漏れが発生した。
- 埋め戻した水道管から、後日になって漏水が始まった。
このような「工事完了後」の事故は、請負業者賠償責任保険の対象外です。
こうしたリスクに対応するのは、「生産物賠償責任保険(PL保険)」という別の保険の役割となります。
請負業者賠償責任保険とPL保険は、補償する期間(工事中か、工事後か)が明確に分かれているのです。
この二つをセットで加入しておかなければ、引き渡し後に発覚した事故に対しては無保険状態になってしまう、ということを覚えておきましょう。
ケース3:復旧費用以外の「罰金」や「休業補償」
賠償責任保険が支払う保険金は、原則として損壊した「モノ」の修理費用など、法律上の賠償責任を負う損害に限定されます。
そのため、事故が原因で発生したとしても、以下のような費用は補償の対象外となるのが一般的です。
ガス管破裂事故などで、行政から法令にもとづき罰金や料を科されたとしても、その金額は保険ではカバーされません。
保険の約款にも、制裁金などは支払対象外であることが明記されています。
事故の影響で近隣の店舗が営業できなくなった場合の営業損失(休業損害)も、原則として対象外です。
特に、物理的な損害をともなわない「工事がうるさくて客足が減った」といったクレームによる逸失利益は補償されません。
保険はあくまで直接的な損害を補うものであり、事業活動の停止にともなう間接的な損害や、行政罰まではカバーできない、ということを理解しておく必要があります。
ガス管・水道管などのライフライン損傷に備える保険選び3つのチェックポイント
使えるケース・使えないケースを理解したところで、次は保険選びです。
失敗しないために、以下の3つのポイントは必ず押さえておきましょう。
- チェック1:万一の事態を想定した十分な補償額か
- チェック2:地下埋設物など必須の特約を見落としていないか
- チェック3:保険金不払いの原因となる告知義務違反はないか
この機会に、自社の保険がこれらのポイントを満たしているか、ぜひ確認してみてください。
チェック1:補償額は十分か?ガス管や水道管の復旧費用は高額
まず確認すべきは、補償される金額の上限、すなわち「保険金額」です。
ガス管や水道管の単純な破損事故でも、修理費用は数十万〜数百万円にのぼります。
もし、事故が火災や爆発といった二次災害に発展したり、人身事故につながったりした場合には、賠償額がさらに高額になる可能性も考えられます。
一般的な工事保険では、1事故あたりの補償限度額を1億円〜3億円に設定するプランが多く見られます。
自社の事業規模や請け負う工事の内容を考え、万一の事態を想定しても、十分に対応できる補償額が設定されているか、必ず確認しましょう。
保険料を抑えたいからと補償額を低く設定しすぎると、いざという時に保険が役に立たない、ということにもなりかねません。
チェック2:地下のガス管・水道管・電線に必須の特約は見落とさない
次に、保険証券の細かい文字で書かれた「特約」や「免責事項」の欄を丁寧に確認します。
特に、ライフライン損傷のリスクにおいて、以下の点は見落としがちな重要ポイントです。
前述の通り、「地下埋設物損壊不担保特約」などが付いていないか、必ず確認しましょう。
解体工事において、この補償がないのは大きなリスクとなりかねません。
「1事故につき10万円は自己負担」といった免責金額が設定されている場合があります。
この金額が高いと、小規模な事故では保険を使えないことになります。
自社の体力に合わせて、的確な免責金額を設定することが重要です。
保険は「契約内容がすべて」です。
口頭での説明だけでなく、証券に記載された文言を正しく理解し、自社に必要な補償が確保されているかを見極めることが、リスク管理の鍵となります。
チェック3:告知義務違反は保険金不払いの原因に
最後に、意外と見落とされがちなのが「告知義務」です。
告知義務とは、保険を契約する際に、事業の内容や年間売上高、過去の事故歴などを、保険会社に対して正しく申告する義務のことです。
もし、この告知内容に偽りがあったり、重要な事実を伝えなかったりした場合、それは「告知義務違反」とみなされます。
たとえば、保険料を安くするために、実際にはリスクの高い解体業を営んでいるにもかかわらず、比較的リスクの低い業種として申告するようなケースです。
告知義務違反が発覚すると、保険会社は契約を解除することができます。
そうなれば、たとえ事故が起きても保険金は一切支払われません。
保険会社は保険金を支払う際に詳細な調査をおこなうため、虚偽の申告はいずれ必ず発覚します。
契約時には、事業の実態を正直かつ正確に伝えることが、最終的に自社を守ることにつながるのです。
ライフライン以外も!解体工事の重要リスクと「保険が使えない」ケース
解体工事に潜むリスクは、ライフラインの損傷だけではありません。
近隣トラブル、アスベスト、地中埋設物といった問題も、事業に影響を与えうるリスクです。
そして、これらのリスクの多くは、基本的な請負業者賠償責任保険だけではカバーしきれない、という共通点があります。
具体的には、以下の3つのケースが挙げられます。
- 【近隣トラブル】騒音・振動による無形の損害
- 【アスベスト】賠償責任保険は原則免責。ただし例外的な専用保険も
- 【地中埋設物】賠償責任ではなく「コスト」と見なされる発見・撤去費用
【近隣トラブル】騒音・振動クレームには「賠償責任保険」の限界も
解体工事と近隣トラブルは、しばしば問題となります。
特に多いのが、騒音や振動に対するクレームです。
もし、工事の振動が原因で「隣の家の壁にひびが入った」というように、明確な物的損害が発生した場合は、その修理費用は請負業者賠償責任保険で補償されます。
しかし、問題は物的損害をともなわないケースです。
「工事がうるさくて眠れない」「精神的な苦痛を受けた」といった理由で慰謝料を請求されたとしても、原則として保険金の支払いは困難です。
賠償責任保険は、あくまで物理的な損害を補うためのものであり、無形の被害まではカバーしきれないのが実情です。
保険だけに頼るのではなく、事前の挨拶回りや防音シートの設置といった、トラブルを未然に防ぐ努力が何よりも重要になります。

解体工事の保険で騒音・振動は補償されない?免責の理由と本当に必要な備えとは
「解体工事の騒音クレームは、保険で対応できるはずだ」 もし、そう考えているのであれば注意が必要です。 結論からいうと、解体工事にともなう騒音・振動・粉塵といった近隣トラブルは、原則として保険の適用対象外です。 そう聞くと、「一体何のための保険なのか」と疑問に思われるかもしれません。 この記事
【アスベスト】賠償責任保険は原則免責。ただし例外的な専用保険も
アスベスト(石綿)は、解体工事において特に注意が必要な有害物質です。
そして、このアスベストに起因する損害は、ほぼすべての請負業者賠償責任保険で「補償対象外(免責)」と定められています。
健康被害の範囲や期間の予測が極めて困難なため、保険会社がリスクを引き受けきれないのです。
そのため、万が一アスベストを飛散させてしまい、近隣住民に健康被害を与えたとしても、通常の保険では補償されないということです。
ただし、一部の保険会社では例外的に、AIG損保の「アスベスト飛散事故補償特約」のような専門の保険や、損保ジャパンの「アスベストコストキャップ保証」のような、想定外の除去費用をカバーする保証制度が提供されています。
【地中埋設物】想定外の発見・撤去費用は「賠償責任保険」の対象外
工事を進めていく中で、図面にはなかった古い建物の基礎や浄化槽、コンクリートガラといった地中埋設物が発見されることもあります。
これらの撤去・処分には、時として数百万円単位の追加費用が発生しますが、この費用は請負業者賠償責任保険の対象外です。
なぜなら、これは第三者に損害を与えた「賠償責任」ではなく、あくまで自社の工事を進める上で発生した「コスト」と見なされるためです。
この地中埋設物の撤去出費は、完全に自己負担となります。
このリスクに備えるためには、民間の「地中埋設物包括保証」といった専門の保証サービスを利用するか、施主との契約段階で「想定外の埋設物が発見された場合は、追加費用を請求する」旨を明確に合意しておくといった対策が必要になります。
まとめ:解体工事の保険は、ガス管・水道管などのリスクに両面で備えよう
本記事では、解体工事におけるガス管や水道管といったライフライン損傷のリスクについて、保険適用の可否を詳しく解説してきました。
結論として、基本的なライフラインの損傷は「請負業者賠償責任保険」でカバーできるものの、地下埋設物の損壊や工事完了後の事故など、特約がなければ補償されないケースも多いという点を押さえておくことが重要です。
- 基本: 請負業者賠償責任保険で、工事中の第三者への損害を補償
- 例外: 地中埋設物、工事後の事故、罰金・休業補償は対象外
- 重要点: 補償額、必須特約、告知義務の3点を必ず確認
- その他: ライフライン以外のリスク(近隣トラブル、アスベスト等)にも別途備えが必要
ライフラインの損傷リスクに正しく備えることは、企業の安定経営のために重要です。
「自社の保険は本当に大丈夫か?」と少しでも感じたら、ぜひ一度、専門家にご相談ください。
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