
投稿日:2025.04.17 最終更新日:2025.04.17
【建設業向け】使用者賠償責任保険で高額リスク回避!労災だけでは足りない理由と注意点

建設現場では、高所作業や重機の使用など危険が伴う場面が多くあります。
もし事故が起きて従業員の方が大けがをした場合、企業(使用者)には高額な賠償責任が問われる可能性があります。
労災保険にはすでに加入している企業がほとんどだと思いますが、実はそれだけではカバーしきれないリスクがあることをご存じでしょうか。
この記事では、労災保険の補償だけでは不足する部分を補う「使用者賠償責任保険」の基本的な内容や、建設業ならではの知っておくべきリスクについて解説します。
また、保険料を抑えるための団体割引や複合保険の活用ポイントなども分かりやすくご紹介します。
高額な賠償請求によって倒産の危機に陥らないためにも、今のうちにしっかりと対策を立てておきましょう。
目次
使用者賠償責任保険とは?労災保険との違いについて
まずは、「使用者賠償責任保険」がどのような保険なのか、労災保険との違いや、建設業でなぜ重要視されるのかを見ていきましょう。
使用者賠償責任保険とは?
使用者賠償責任保険は、業務中や通勤中に従業員がケガをしたり、最悪の場合には死亡してしまった際に、企業(使用者)に法律上の損害賠償責任が発生した場合、その損害を補償する保険です。
この保険によって、労災保険だけではカバーしきれない「慰謝料」や、事故がなければ将来得られたはずの収入(逸失利益)といった賠償金の支払いに備えることができます。
従業員が安心して働ける環境を整え、万が一の際に企業が負う経済的な負担を軽減するために、この保険は大きな支えとなります。
労災保険では「慰謝料や逸失利益」はカバーできない
先ほど「労災保険だけではカバーしきれない」と触れましたが、労災保険と使用者賠償責任保険では補償される範囲が異なります。
労災保険は国が運営する制度であり、業務上のケガや病気に対して治療費や休業給付、障害年金などを支給します。
ただし、労災保険が対象とするのは、主に「直接的な経済損失」です。そのため、精神的な損害に対する慰謝料や、将来にわたる収入の減少分(逸失利益)などは、原則として補償の対象外となります。
もし裁判などで、企業側に安全配慮義務違反(従業員が安全に働けるように配慮する義務を怠ったこと)があったと認定されれば、企業は労災保険からの給付額を超える部分について、賠償責任を負うことになります。
事故の内容や損害の程度によっては、賠償額が数千万円、場合によっては億単位に達することも珍しくありません。
これは、企業の経営を揺るがしかねません。最悪の場合、倒産につながるリスクさえあります。
建設業で特に重要視される理由
では、なぜ建設業において使用者賠償責任保険が特に重要なのでしょうか。
労働災害死亡者数は「全体の約31.8%」と最多
建設業は、他の業種と比較して労働災害のリスクが依然として高い業種です。
厚生労働省が発表した「令和5年 労働災害発生状況の分析等」によると、令和5年における労働災害による死亡者数(全産業で755人)のうち、建設業は240人と最も多く、全体の約31.8%を占めています。
また、休業4日以上の死傷者数(全産業で135,371人)においても、建設業は15,508人と全体の約11.5%を占めている状況です。
(出典:「令和5年の労働災害発生状況を公表(厚生労働省)」)
最近でも、2025年の4月に東京都文京区本郷の電柱工事現場で変圧器が落下し、男性作業員が死亡した事故がありました。
(出典:「産経新聞」)
このように、高所での作業やクレーンなどの重機の操作、足場の設置・解体といった危険を伴う工程が日常的に発生するため、重大な事故につながる可能性が他の業種よりも高いのです。
特に企業規模が小さい場合、一度の重大事故による高額な賠償は、経営に深刻な影響を与えかねません。
そもそも元請から保険加入が義務付けられている
ゼネコンや公共工事の下請けとして業務を行う企業では、元請企業から厳しい安全管理体制を求められることが一般的です。
契約条件として、使用者賠償責任保険を含む適切な保険への加入が義務付けられているケースも多いです。
たとえ自社で十分な安全対策を実施していたとしても、万が一事故が発生し「企業としての管理不備」が問われた場合、裁判で責任を追及されるリスクは避けられないのです。
こうした背景からも、従業員への高額な賠償責任に備えるためにも、使用者賠償責任保険を含む、保険への加入は不可欠と言えます。
「使用者賠償責任保険」の補償範囲は?どこまでカバーできる?
建設現場における高額賠償リスクを踏まえると、使用者賠償責任保険の重要性をご理解いただけたかと思います。
では、この保険は具体的にどのような損害をカバーしてくれるのでしょうか?
ここでは、補償される主な項目や金額の上限、注意点などについて、さらに詳しく見ていきましょう。
保険でカバーされる主な損害項目
使用者賠償責任保険では、主に次のような損害項目が補償の対象となります。
どのような費用がカバーされるのか、下の表で確認してみましょう。
損害項目 | 説明 |
---|---|
治療費・看護費用 | 入院費、手術費、リハビリ費用など、治療にかかる費用 |
休業損害 | 治療や後遺障害によって働けない期間の収入減少分 |
慰謝料 | 被害者やその家族が受けた精神的・肉体的苦痛に対する賠償金 |
将来の収入減少分(逸失利益) | 後遺障害や死亡により、将来得られなくなったと想定される収入 |
争訟費用 | 裁判や示談交渉にかかる弁護士費用などの法的手続き費用 |
これまでも触れてきた通り、労災保険では通常カバーされない「慰謝料」や「将来の収入減少分(逸失利益)」を補償できる点が、使用者賠償責任保険の大きな特徴と言えます。
補償金額の上限・特約の有無
使用者賠償責任保険では、契約プランに応じて1億円、2億円、5億円といったように、補償金額の上限を設定できます。
補償額が大きいほど安心感は増しますが、その分保険料も高くなります。自社の事業規模やリスクの大きさを考慮して金額を選ぶことが大切です。
また、特約を付帯することで、補償内容をより充実させることができます。
特に建設業では、自社の直接雇用の従業員だけでなく、下請け業者や一人親方など、さまざまな立場の作業員が現場に関わることが多いため、「誰を補償の対象とするか」は非常に重要なポイントになります。
契約時には、自社の作業体制を正確に伝えた上で、補償される「被保険者の範囲」をしっかり確認することが大切です。
例えば、次のような点は必ずチェックし、必要に応じて特約を付帯することを検討しましょう。
- 下請け業者の従業員は補償対象か?
自社の責任が問われる場合に備え、「下請負人に対する賠償責任補償特約」などの付帯が必要か確認しましょう。 - 派遣社員や期間工、アルバイトなども対象に含まれるか?
雇用形態が多様な従業員がいる場合、その全員が補償範囲内か確認しましょう。 - 一人親方など、個人事業主の作業員との関係性はどうか?
請負契約の内容によっては、自社に賠償責任が及ぶ可能性も考慮して、補償の必要性を検討しましょう。
業種・現場規模による補償範囲の違い
建設業と一口に言っても、手掛ける工事の種類や現場の規模によって、リスクの大きさや求められる補償内容は違います。
自社に最適な補償内容を検討するために、以下の点をチェックしてみましょう。
- 専門工事ごとのリスクに対応できているか?
電気工事、鳶工事、解体工事など、専門工事にはそれぞれ特有の重大事故リスク(感電、墜落、倒壊など)が存在します。このような最悪のケースを想定し、補償上限額が十分かどうかを必ず確認してください。 - 現場規模による注意点を押さえているか?
大規模な現場では、被保険者範囲(下請け業者などを含むか)の明確化と、十分な補償上限額の設定が特に重要になります。もちろん、小規模な現場であっても高額賠償に至るリスクは変わりません。適切な補償上限額が設定されているか確認しましょう。 - 重要な作業が免責対象になっていないか?
自社の主要な専門作業(高所作業、特定の重機操作など)が、保険金の支払対象外となる免責事項に含まれていないか、契約内容を細かく確認してください。もし免責対象となるリスクが高い場合は、それをカバーする特約の有無や、他の保険での対策を検討しましょう。
大切なのは、どの会社にも当てはまるような一般的なプランを選ぶのではなく、自社の事業内容や工事実績、作業員の構成などを客観的に分析し、潜んでいるリスクに見合った保険プランを設計することです。
保険料をどう抑える?団体割引と複合型保険活用のポイント
使用者賠償責任保険への加入を検討する上で、やはり保険料は気になるポイントですよね。
必要な補償はしっかりと確保しつつ、できるだけコストは抑えたいものです。
ここでは、保険料の負担を軽減するための代表的な方法を2つご紹介します。
- 団体割引を活用する
所属する建設業協会や組合、商工会議所などを通じて使用者賠償責任保険に加入すると、「団体割引」が適用され、保険料が割安になることがあります。
個別で加入する場合に比べて10~30%以上安くなるケースもあるため、まずは加入している団体に割引制度があるか確認してみるのがおすすめです。 - 複数の保険をまとめて管理する
建設業では、使用者賠償責任保険以外にも複数の保険に加入することが一般的です。
これらを個別に契約するのではなく、必要な補償を「建設総合賠償保険」や「工事包括保険」といったパッケージ型の保険で一本化する方法もあります。
これにより、保険料の割引が期待できるだけでなく、契約管理の手間も軽減されるメリットがあります。
注意点
公共工事の場合、使用者賠償責任保険とは別に、特定の工事保険への単独加入を求められ、複合型保険を活用できない場合があります。
上記のような方法をうまく活用することで、万が一の高額賠償リスクにしっかりと備えつつ、保険料の負担を軽減できる可能性があります。
実際に、保険比較WEBを運営するマルエイソリューションでは、保険の見直しによって約80%もの費用削減につながった事例もあります。(引用:マルエイソリューション)
保険料のコスト削減については、以下の記事で詳しく紹介していますので、ぜひこちらも合わせてお読みください。

工事保険の相場は?必要補償・保険料を安くする方法を専門家が解説
建設現場は高所作業や大型機械の使用など、事故リスクが他の業種と比べて格段に高いといわれます。 万が一、大きなけがや資材の破損、近隣建物への被害などが起こった場合、数千万円から数億円の賠償金が発生することも珍しくありません。 しかし、こうしたリスクに対して「工事保険」の加入を後回しにしている事業者
「使用者賠償責任保険」で安心を実現するために
今回は、建設業における使用者賠償責任保険の重要性や、加入・見直しにおけるポイントについて解説しました。
労災保険だけではカバーできない高額な賠償リスクに備えるために、この保険は不可欠な存在です。
最後に、使用者賠償責任保険を検討する上で、特に確認していただきたいポイントをまとめました。
- 補償内容は十分か?
労災保険では対象外となる慰謝料や将来の収入減少分(逸失利益)が、きちんと補償範囲に含まれているか確認しましょう。 - 補償上限額は適切か?
自社の事業規模やリスクに見合った十分な上限額が設定されているか見直しましょう。 - 補償される人の範囲は明確か?
特に下請け業者や多様な雇用形態の従業員がいる場合、誰が保険の対象となるのかを契約時に必ず確認してください。 - 重要な作業が免責されていないか?
自社が行う主要な作業や、特有のリスク(高所作業など)が免責事項となっていないか、契約内容を細かくチェックしましょう。 - コスト削減の余地はないか?
団体割引が利用できないか、他の工事保険とまとめて契約(複合保険)することで保険料を抑えられないか、検討しましょう。
これらの点を踏まえ、自社にとって最適な保険プランを設計し、安心して事業を継続できる体制を整えましょう。
「使用者賠償責任保険について、もっと具体的に相談したい」「自社に合ったプランや割引制度を知りたい」とお考えでしたら、ぜひ一度、私たち工事保険比較WEBにご相談ください。
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