
投稿日:2025.08.29 最終更新日:2025.08.29
解体工事の労災保険は義務。でも本当に十分?任意保険で補うべき補償とは

解体工事は建設業の中でも特に事故リスクが高く、墜落や倒壊、重機との接触など、命に直結する労災が多発しています。
こうした現場で従業員や協力会社を守るために欠かせないのが「労災保険」です。
事業者にとっては法律で義務づけられているだけでなく、事故が発生した際に会社の存続を左右するほど重要な備えでもあります。
また、一人親方や下請けなど立場によって加入方法は異なり、法定労災だけではカバーできないリスクも存在します。
この記事では、解体工事における労災保険の重要性から、加入義務、罰則、そして法定の労災保険だけではカバーしきれない高額な賠償リスクに備えるための「労災上乗せ保険(業務災害保険・任意労災保険)」まで、事業主として知っておくべき知識を分かりやすく整理します。
- 解体工事で労災保険がなぜ重要なのか
- 労災保険の加入義務と未加入だった場合のリスク
- 法定労災保険だけでは足りない補償内容
- 不足分をカバーする「労災上乗せ保険」の必要性
目次
解体工事の事故リスクは段違い!労災保険が絶対に欠かせない3つの理由
まずは、なぜ解体工事において労災保険が重要なのか、その理由を3つの側面から見ていきましょう。
理由1:建設業の中でも解体工事の死亡災害率は突出して高い
建設業は、すべての産業の中でもっとも労働災害による死亡者数が多い業種です。
厚生労働省の統計によると、2025年8月時点で120人もの方が建設現場で命を落としており、これは全産業の死亡者数の3割以上を占める数字です。
その中でも、特に危険性が高いのが解体工事の現場です。
建築物の解体工事での死亡事故の原因を分析すると、約52%が「墜落・転落」によるもので、作業員の命を脅かす最大の要因となっています。
さらに、死亡災害の半数近くが従業員数1〜9名の小規模な事業所で発生しているという事実も見逃せません。
「うちは小さい会社だから大丈夫」ということは決してなく、むしろ事業規模が小さいほど、一件の重大事故が会社の存続に直結する危険性があります。
理由2:重機や高所作業など、特有の危険が常に潜んでいる
解体工事の現場には、他の建設工事とは異なる特有のリスクが存在します。
実際に頻発している典型的な事故事例が以下の3つです。
1. 墜落・転落事故
もっとも多いのが、高所からの墜落です。
老朽化したスレート屋根や腐食した足場の床板などを踏み抜いてしまい、数メートル下に転落して命を落としたり、重い障害を負ったりするケースが後を絶ちません。
2. 飛来・落下物による事故
解体作業中は、コンクリート片やガラスなどが予期せぬ形で飛散・落下することがあります。
これらの飛来物や落下物が、作業員や通行人に当たり、重大な事故につながるケースも少なくありません。
3. 重機による事故
ショベルカーなどの大型重機は、解体工事に欠かせない一方で、一瞬の操作ミスや確認不足が大きな事故につながります。
運転席からの死角に入ってしまったり、重機の旋回範囲内に気づかずに立ち入ったりして、挟まれたり巻き込まれたりする事故は少なくありません。
実際に、散水作業をしていた作業員が重機の旋回部分に接触して亡くなった事例も報告されています。
理由3:元請け・下請けの複雑な関係性
建設業界特有の多重下請け構造も、労災リスクを高める一因です。
工期や予算が厳しい現場では、元請けの安全管理が不十分だと、下請けの作業員が危険な状況で作業せざるを得ないケースがあります。
【立場別】元請け・下請け・一人親方で違う?労災保険の基本ルール
ひとくちに「解体工事の現場」といっても、そこには元請けの事業者だけでなく、下請け業者や一人親方など、さまざまな立場の人が関わっています。
解体工事と労災保険について、事業主として最低限押さえておくべき基本的なルールを3つ確認します。
【事業者】従業員を雇うなら加入は法律上の義務
大前提として、労災保険に加入することは法律で義務付けられています。
従業員を一人でも雇用している事業主は、業種や事業規模を問わず、事業を開始したときに労働保険関係成立届を提出し、労災保険に加入しなければなりません。
これは、正社員だけでなく、パートやアルバイトといった雇用形態に関わらないルールです。
加入手続きは、事業を開始したときに、所轄の労働基準監督署へ「労働保険関係成立届」を提出することで行います。
【下請け業者】加入は必須!元請けから加入証明を求められるのが一般的
建設業では、元請け業者が現場全体の労災保険料をまとめて国に納付する「メリット制(一括有期事業)」という仕組みがあります。
しかし、これはあくまで保険料の納付方法に関する特例です。
この仕組みがあるからといって、下請け業者自身の労災保険への加入義務がなくなるわけではありません。
各下請け業者も、自社で労働者を雇用している以上、独立した事業者として労災保険の関係成立手続きを行う必要があります。
近年、コンプライアンス遵守の観点から、元請け業者が下請け業者に対して「労働保険番号の通知書」といった加入証明書類の提出を求めるのが一般的です。
もし加入証明ができなければ、安全管理体制に問題があると判断され、契約を断られてしまう可能性もあります。
【一人親方】任意加入でも実質必須?特別加入制度の仕組み
従業員を雇用せず、一人で事業を行う「一人親方」は、労働者ではないため、原則として労災保険の強制加入の対象にはなりません。
しかし、解体工事のような危険性の高い業務に従事する一人親方を保護するため、「特別加入制度」という仕組みが設けられています。
これは、一人親方が労働局長の承認を受けた「特別加入団体(一人親方労災保険組合など)」を通じて、任意で労災保険に加入できる制度です。
特別加入していなければ、万が一現場でケガをしても、治療費や休業中の生活費など、公的な労災補償は一切受けられません。
また、国土交通省のガイドラインの影響もあり、元請けの現場によっては「特別加入していない一人親方は入場させない」というルールを設けているケースが増えています。
そのため、任意加入とはいえ、事実上、特別加入は仕事を得るための必須条件となりつつあります。
もし未加入だったらどうなる?罰則と事業が止まるリスク
もし、労災保険に加入すべき事業者や一人親方が未加入だった場合、どうなるのでしょうか。
未加入には、以下のような厳しいリスクや罰則が伴います。
金銭的罰則 | 行政指導を受け、過去2年分まで遡って保険料を徴収されるほか、ペナルティとして10%の追徴金が課されます。 |
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事故発生時の費用負担 | 未加入の期間中に労災事故が起きてしまうと、国が被災労働者に給付した治療費や休業補償などの費用の全部または一部(故意・重過失の場合は100%、それ以外は40%)を、事業者が負担しなければなりません。 |
刑事罰 | 加入手続きを怠るなど悪質なケースと判断された場合は、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性もあります。 |
事業上のリスク | 企業名が公表されたり、ハローワークでの求人ができなくなったりといった行政処分を受けることもあり、事業の継続そのものに影響が出かねません。 |
これらのリスクを避けるためにも、法令に従った適切な手続きが欠かせません。
労災事故が起きたらどうなる?法定労災で支払われるお金・支払われないお金
では、もし実際に労災事故が起きてしまったとき、労災保険からどのような補償が受けられるのでしょうか。
法律で加入が義務付けられている労災保険(法定労災保険)は、あくまで基本的な補償です。
しかし、解体工事の現場で起こりうる重大事故では、法定労災保険だけでは到底カバーしきれない高額な損害賠償が発生するケースが少なくありません。
法定労災保険から支払われる4つの主な補償
法定労災保険は、従業員が仕事中や通勤中にケガや病気、あるいは死亡した場合に、国が事業主に代わって一定の保険給付を行う制度です。
主な補償内容は以下の通りです。
療養(補償)給付 | 労災指定病院での治療費、薬代、手術費などが原則自己負担なしで受けられます。 |
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休業(補償)給付 | ケガの療養のために仕事を休んだ場合、休業4日目から1日あたり給付基礎日額の80%(特別支給金含む)が支給されます。 |
障害(補償)給付 | 治療後も体に障害が残った場合、その障害等級(1〜14級)に応じて年金または一時金が支給されます。 |
遺族(補償)給付 | 従業員が死亡した場合、残された遺族の人数などに応じて年金が支給されます。また、葬儀費用として葬祭料も支払われます。 |
【要注意】法定労災だけでは足りない!慰謝料や逸失利益は対象外
法定労災保険は、あくまで被災した従業員に対する「最低限の生活補償」を目的としています。
そのため、事故によって生じるすべての金銭的負担をカバーするものではありません。
特に重要なのが、以下の2つは労災保険の支払い対象外であるという点です。
慰謝料 | 事故による精神的な苦痛に対する補償 |
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逸失利益 | 事故がなければ将来得られたはずの収入 |
もし会社側に安全配慮義務違反などの過失が認められた場合、被災した従業員やその遺族は、法定労災保険の給付とは別に、会社に対して損害賠償を求めることができます。
過去の裁判では、数千万円から1億円を超える高額な賠償が命じられるケースも珍しくなく、会社の経営に大きな影響を及ぼす可能性があります。
事故発生後の対応フロー|労基署への報告から給付請求まで
万が一、現場で労災事故が発生してしまった場合の基本的な流れは以下の通りです。
被災者の救護 | 何よりもまず、被災した従業員の救護を最優先し、救急車の手配や病院への搬送を行います。 |
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労基署への報告 | 事故の状況を把握し、所轄の労働基準監督署へ「労働者死傷病報告」を速やかに提出します。これは法律で定められた事業者の義務であり、報告を怠る「労災隠し」は罰則の対象となります。 |
保険給付の請求 | 被災した従業員や事業者が、必要な給付に応じた請求書(療養給付であれば「療養補償給付たる療養の給付請求書」など)を作成し、病院の証明などを受けた上で、労働基準監督署へ提出します。 |
調査・給付決定 | 提出された書類をもとに労働基準監督署が調査を行い、労災と認定されれば、保険給付が決定・支払われます。 |
法定労災だけでは不十分!高額賠償に備える「労災上乗せ保険」とは
必須の法定労災保険ですが、実はそれだけでは十分ではありません。
そこで追加で検討すべき保険が、「労災上乗せ保険(業務災害保険・任意労災保険)」です。
なぜなら、過去の裁判では、会社の安全管理体制に不備があった場合、法定労災からの給付額をはるかに超える高額な損害賠償(数千万〜1億円)が命じられるケースが実際に起きているためです。
この不足分をカバーするのが、民間の保険会社が提供する「労災上乗せ保険(業務災害補償保険・任意労災保険)」です。
高額賠償への備えになるだけでなく、手厚い補償は従業員の安心感にも繋がり、人材の確保や定着といった面でもプラスに働きます。
こうした労災上乗せ保険は、私たちマルエイソリューションのような専門の保険代理店にご相談いただくことで、自社の状況に合ったプランを効率的に見つけられます。
例えば、私たちがご提案する団体割引などを活用すれば、個人で契約するより保険料を10%〜30%抑えられるケースもあります。
ただし、この保険もあくまで「従業員のケガ」への備えです。
近隣の建物や通行人といった第三者への賠償リスクは、「請負業者賠償責任保険」など別の保険で備える必要がある点も覚えておく必要があります。
労災上乗せ保険の具体的な補償内容や保険商品の選び方については、こちらの記事で詳しく解説しています。

工事現場で役立つ労災上乗せ保険|カバーするリスクと補償内容をわかりやすく解説
工事現場では、日々さまざまなリスクが潜んでいます。その中でも特に重要なのは、現場で働く従業員の安全をどのように守るかということです。重機や高所での作業など、工事現場ならではの危険な環境は、ちょっとした不注意でも大きな事故につながりかねません。従業員の安全確保は、企業にとって最優先で取り組むべき課題の
自社の加入状況、正しく把握できていますか?簡単チェックリスト
「うちはちゃんと加入しているはず」と思っていても、手続きが漏れていたり、補償内容がリスクに見合っていなかったりするケースは意外と多いものです。
この機会に、自社の状況を3つのステップで確認してみましょう。
ステップ1:自社の労災保険の加入状況を確認する方法
まずは、自社が労災保険に正しく加入できているかを確認します。
以下のいずれかの書類が手元にあるかを探してみてください。
- 労働保険関係成立届(控)
事業を開始したときに労働基準監督署へ提出した書類の控えです。 - 労働保険概算・確定保険料申告書(控)
毎年、年度更新のために提出する書類の控えです。ここに記載されている「労働保険番号」が、加入している証となります。
もし書類が見当たらない場合は、厚生労働省の「労働保険適用事業場検索」サイトで、自社の名前や所在地を入力して加入状況を照会することもできます。
ステップ2:下請け・一人親方の加入状況も確認しよう
元請け事業者として現場を管理する立場であれば、協力会社である下請け業者や一人親方の加入状況を確認することも、安全管理体制を構築する上で欠かせません。
- 下請け業者に求める書類
「労働保険番号の通知書」や「労働保険料の納入証明書」など - 一人親方に求める書類
所属する特別加入団体が発行する「特別加入の加入証明書」や「組合員証」など
労働安全衛生法では、元請け事業者は関係請負人の労働者の労働災害を防止するために必要な措置を講じることが定められており、未加入の場合は指導する責任があります。
万が一、下請けの作業員が被災した場合、元請けの安全管理体制が問われる可能性もゼロではありません。
ステップ3:補償内容は十分か?上乗せ保険の必要性を判断する
法定労災保険に加入していることを確認できたら、次にその補償内容が自社のリスクに見合っているかを検討します。
- 万が一、死亡事故や重篤な後遺障害が残る事故が起きた場合、数千万円から1億円を超える高額な損害賠償を請求される可能性があります。
- 現在の会社の体力で、そのような事態に耐えられますか?
- 従業員やその家族の生活を、本当に守りきれますか?
これらの問いに少しでも不安を感じるなら、保険プロによる保険の見直しを検討すべきタイミングです。
長年同じ保険を継続している場合、見直しによって年間の保険料が大幅に削減できる可能性も少なくありません。
実際に、私たちマルエイソリューションでは、お客様の保険全体の見直しをお手伝いし、年間保険料を約80%削減した事例もあります。 (参考:マルエイソリューション)
まとめ:解体工事の労災保険は上乗せ加入を強く推奨!専門家との見直しでコスト削減も
この記事では、解体工事における労災保険の重要性について解説しました。
法律で加入が義務付けられているだけでなく、万が一の事故の際に会社と従業員を守るために欠かせない備えです。
しかし、法定労災保険だけでは慰謝料などの高額な損害賠償をカバーしきれない現実も見てきました。
- 解体工事の労災保険加入は法律上の義務
- 未加入の場合は罰則や費用の自己負担リスクがある
- 法定労災保険では慰謝料や逸失利益は補償されない
- 不足分は労災上乗せ保険(業務災害保険・任意労災保険)で備える必要がある
自社に本当に合った備えを用意するには、専門家への相談がもっとも確実です。
- コスト削減に自信あり!
独自の団体割引(入会費・年会費無料の「マルエイ取引先協力会」など)や、保険会社ごとのプラン比較により、保険料の大幅な削減を目指せます。 - 豊富な選択肢から最適プランをご提案
国内外の主要保険会社・40以上の商品の中から、お客様の重機の種類や使用状況、リース契約の有無などを踏まえ、過不足のない最適な補償プランを公平な視点で厳選します。 - 安心の実績とサポート
これまで多くのお客様の保険選びをお手伝いし、継続率95%以上という高いご支持をいただいています。
私たちマルエイソリューションは、お客様の状況に合わせた最適な保険プランをご提案します。
国内外40社以上の商品から比較検討し、独自の団体割引(入会費・年会費無料)などを活用することで、保険料の大幅なコスト削減も目指せます。
これまで多くのお客様をサポートし、継続率95%以上という高いご支持をいただいている実績も、私たちの強みです。
現在の補償内容で十分か少しでも不安を感じたら、まずは一度、私たちにご相談ください。