
2025.08.29
解体工事では、事前の調査で把握できなかった浄化槽や井戸、古い建物の基礎などの地中埋設物の発見が、追加費用や工期見直しの要因となることがあります。
解体工事のリスク対策の基本は、多くの業者が加入する「請負業者賠償責任保険」です。
しかし、その”基本”の保険にこそ、思いがけない注意点が潜んでいることをご存じでしょうか。
実は、契約内容によっては地中埋設物の損壊が補償対象外(免責)であったり、そもそも発見された埋設物自体の撤去費用はカバーされなかったりと、”基本”のはずの保険だけでは対処できないケースがほとんどなのです。
この記事では、そんな保険の注意点を回避するために、解体工事の地中埋設物リスクに本当に必要な保険の種類、補償範囲、そして保険料を抑える実践的なコツを専門家の視点で解説します。
なお、解体工事の保険全体を網羅的に理解したい方は、まず以下の記事で全体像を把握いただくと、よりスムーズに読み進められます。
その中でも、解体工事の特有リスクについては、以下の記事で網羅的に整理しています。
目次
地中埋設物のリスクはさまざまなため、一つの保険ですべてをカバーするのではなく、複数の保険を組み合わせて備えるのが一般的です。
ここでは基本となる保険と、状況に応じた特約を解説します。
解体工事業者が加入するもっとも基本的な保険が「請負業者賠償責任保険(請賠)」です。
これは、工事中の事故で第三者の身体や財産に損害を与えた場合の法律上の賠償責任を補償します。
例えば、重機での作業中に地中のガス管を壊してしまった場合、その修理費用や周辺への損害賠償金が対象です。
目に見えない地中のリスクに備える上で、まさに必須の保険です。
ただし、契約内容によっては「地下埋設物への損害」が補償対象外の場合があるため、契約時の確認が必須です。
賠償責任保険といってもさまざまな種類がありますが、その中で今回は請負業者賠償責任保険について説明します。 「請負業者賠償責任保険って何?」と思う方もいるでしょう。 請負業者賠償責任保険は、工事現場での作業中に発生する第三者への損害を補償する保険です。例えば、作業中に通行人にケガを負わせてしまった
工事中に見つかった埋設物自体の撤去・処分費用は、第三者への賠償ではないため、残念ながら請負業者賠償責任保険ではカバーされません。
そこで役立つのが、専門の特約や保証サービスです。
民間の「埋設廃棄物/地中障害物保証」などを利用すれば、想定外の撤去費用リスクを保証会社に移せます。
また、アスベスト除去や土壌汚染といった環境リスクも、通常の保険では免責がほとんどです。
これらには「環境汚染賠償責任保険」など、専用の保険や特約で備える必要があります。
「うちの会社は、ちゃんと工事保険に入っているから大丈夫」 解体工事におけるアスベスト対策について、もし、そうお考えでしたら、一度お手元の保険証券を確認してみてください。 その保険証券の小さな文字で書かれた部分に、「アスベスト(石綿)による損害は補償の対象外」という一文が見つかるかもしれません。
忘れてはならないのが、自社の従業員に対するリスクです。
地中埋設物の撤去作業などでは、労働災害が起きる可能性があります。
この備えの基本となるのが、国が運営する「労働者災害補償保険(労災保険)」です。
これは事業者に加入が義務付けられている強制保険で、従業員が業務中に負傷した場合などの治療費や休業補償を行います。
国の労災保険だけでは不足する補償や、使用者としての賠償責任リスクに備える「労災上乗せ保険」の重要性については、こちらの記事で詳しく解説しています。
解体工事は建設業の中でも特に事故リスクが高く、墜落や倒壊、重機との接触など、命に直結する労災が多発しています。 こうした現場で従業員や協力会社を守るために欠かせないのが「労災保険」です。 事業者にとっては法律で義務づけられているだけでなく、事故が発生した際に会社の存続を左右するほど重要な備えでも
労災保険の補償は国が定めた基準に限られ、慰謝料などすべての損害をカバーするわけではありません。
もし事故の原因に会社側の安全配慮義務違反が認められると、従業員側から高額な損害賠償を請求される可能性があります。
この訴訟リスクに備えるのが「使用者賠償責任保険」です。多くの場合、請負業者賠償責任保険の特約として加入できます。
セットで備えておくことで、従業員と会社、双方のリスクに対応できます。
建設現場では、高所作業や重機の使用など危険が伴う場面が多くあります。 もし事故が起きて従業員の方が大けがをした場合、企業(使用者)には高額な賠償責任が問われる可能性があります。 労災保険にはすでに加入している企業がほとんどだと思いますが、実はそれだけではカバーしきれないリスクがあることをご存じで
保険の補償範囲にはルールと限界があります。
自社に必要な備えを考えるためにも、まずは保険金が支払われるケースと、支払われないケースを具体的に見ていきましょう。
請負業者賠償責任保険で補償されるのは、原則として「第三者の身体や財物に与えた損害」です。
ただし、発見された埋設物自体の撤去・処分費用は対象外なので注意しましょう。
契約には必ず「免責事由」という、保険金が支払われないケースが定められています。
特に以下の点には注意が必要です。
こうした「保険が効かない」免責事項全般については、以下の記事で詳しく解説しています。
「解体工事の作業対象である建物そのものは、多くの保険で補償の対象外になる」 実は、解体事業者が加入する賠償責任保険には、このように補償が適用されない「免責事項」がいくつも定められています。 このルールを知らないまま万が一の事態が起きれば、損害が自己負担となり、会社の経営に大きな影響を与えることも
もしもの時、保険金が想定より少なくなることもあります。その原因は、ほとんどの場合、契約内容にあります。
保険金を請求すると、翌年度からの保険料に影響が出る可能性はあります。
多くの保険には、無事故が続くと保険料が割り引かれる「無事故割引」があります。
保険金を請求するとこの割引がなくなったり、保険料が割増になったりすることがあります。
ただし、保険は万一の際に事業を守るためのもの。
将来の保険料を気にして請求をためらうのは本末転倒です。
むしろ、日頃からの安全管理への取り組みが、長期的に保険料へ良い影響を与えることもあります。
補償内容を維持しつつ、保険料という固定費を上手に削減する方法も存在します。
ここでは3つの視点からご紹介します。
契約内容を見直し、自社にとって本当に必要な補償に絞り込むことで、保険料を削減できます。
有効なのは「免責金額(自己負担額)の引き上げ」です。
免責金額を高く設定すれば、その分保険料は安くなります。
小規模な損害は自社で対応し、保険は大規模な事故に備える、という考え方です。
ただし、コスト削減を優先するあまり、解体工事特有の必須リスク(地中埋設物、近隣賠償など)を安易に削らないよう、専門家と相談しながら慎重に見極めることが欠かせません。
補償内容の見直し以外にも、保険料を抑える方法はあります。
まず「団体割引」を確認しましょう。
建設業協会などが組合員向けに割安な団体保険プランを用意していることがあります。
個人契約より10%〜30%ほど安くなるケースも珍しくありません。
次に、日頃の安全管理への取り組み、すなわち「企業信用力」のアピールです。
優良事業者向けの割引制度を設けている保険会社もあり、無事故記録や安全管理体制などが評価されれば、割引につながることがあります。
加入する保険会社やプランを見直すだけでも、保険料は大きく変わることがあります。
同じ補償内容でも、どの保険会社の商品を選ぶかで、年間の保険料が数十万円単位で変わることも決して珍しくありません。
実際に、私たちマルエイソリューションにご相談いただいたお客様の中には、保険全体の見直しを行った結果、年間の保険料を約80%削減できたというケースもあります。(参考:マルエイソリューション)
現在の保険に長年入り続けている会社ほど、一度専門家の視点で見直すことで、大きな費用削減が期待できます。
建設現場は高所作業や大型機械の使用など、事故リスクが他の業種と比べて格段に高いといわれます。 万が一、大きなけがや資材の破損、近隣建物への被害などが起こった場合、数千万円から数億円の賠償金が発生することも珍しくありません。 しかし、こうしたリスクに対して「工事保険」の加入を後回しにしている事業者
ここまで、解体工事での地中埋設物のリスクに備える保険について、具体的な補償範囲から保険料を抑える方法まで解説してきました。
自社のリスクに合った保険を備えておくことで、安定した事業運営につながります。
しかし、数ある保険商品の中から、本当に自社に最適なプランを独力で見つけ出すのは容易ではありません。
「今の保険で、本当に地中埋設物の撤去費用までカバーできる?」
「施主とのトラブルを避けるため、もっと万全な備えはないだろうか?」
「補償はしっかりさせたいけど、保険料はできるだけ抑えたい…」
もし、このようなお悩みや疑問をお持ちでしたら、ぜひ一度、私たちマルエイソリューションにご相談ください。
ご相談・お見積もりは無料です。オンラインでのご相談も可能ですので、全国どこからでもお気軽にお問い合わせください。