
撤去費用は保険で出る?解体工事の地中埋設物に「使えない」ケースと正しい備え方

解体工事では、事前の調査で把握できなかった浄化槽や井戸、古い建物の基礎などの地中埋設物の発見が、追加費用や工期見直しの要因となることがあります。
解体工事のリスク対策の基本は、多くの業者が加入する「請負業者賠償責任保険」です。
しかし、その”基本”の保険にこそ、思いがけない注意点が潜んでいることをご存じでしょうか。
実は、契約内容によっては地中埋設物の損壊が補償対象外(免責)であったり、そもそも発見された埋設物自体の撤去費用はカバーされなかったりと、”基本”のはずの保険だけでは対処できないケースがほとんどなのです。
この記事では、そんな保険の注意点を回避するために、解体工事の地中埋設物リスクに本当に必要な保険の種類、補償範囲、そして保険料を抑える実践的なコツを専門家の視点で解説します。
- 「請負業者賠償責任保険」で補償されない意外なケース
- 埋設物の撤去費用や環境汚染リスクに備える方法
- 自社に合った保険の組み合わせ方と、その見極め方
- 保険料を抑えるための3つの実践的なコツ
読み終える頃には、自社のリスク対策に自信が持てるようになっているはずです。
目次
解体工事の地中埋設物リスクに備える4つの保険
地中埋設物のリスクはさまざまなため、一つの保険ですべてをカバーするのではなく、複数の保険を組み合わせて備えるのが一般的です。
ここでは基本となる保険と、状況に応じた特約を解説します。
具体的には、以下の4つの保険・特約が柱です。
- 対人・対物事故の基本となる「請負業者賠償責任保険」
- 撤去費用や環境汚染に備える「特約・専門保険」
- 従業員を守る義務である「労災保険」
- 労災だけでは不足する部分を補う「使用者賠償責任保険」
対人・対物事故の基本「請負業者賠償責任保険」
解体工事業者が加入するもっとも基本的な保険が「請負業者賠償責任保険(請賠)」です。
これは、工事中の事故で第三者の身体や財産に損害を与えた場合の法律上の賠償責任を補償します。
例えば、重機での作業中に地中のガス管を壊してしまった場合、その修理費用や周辺への損害賠償金が対象です。
目に見えない地中のリスクに備える上で、まさに必須の保険です。
ただし、契約内容によっては「地下埋設物への損害」が補償対象外の場合があるため、契約時の確認が必須です。

請負業者賠償責任保険とは?第三者への賠償リスクに備える保険について解説
賠償責任保険といってもさまざまな種類がありますが、その中で今回は請負業者賠償責任保険について説明します。 「請負業者賠償責任保険って何?」と思う方もいるでしょう。 請負業者賠償責任保険は、工事現場での作業中に発生する第三者への損害を補償する保険です。例えば、作業中に通行人にケガを負わせてしまった
撤去費用や環境汚染に備える特約・専門保険
工事中に見つかった埋設物自体の撤去・処分費用は、第三者への賠償ではないため、残念ながら請負業者賠償責任保険ではカバーされません。
そこで役立つのが、専門の特約や保証サービスです。
民間の「埋設廃棄物/地中障害物保証」などを利用すれば、想定外の撤去費用リスクを保証会社に移せます。
また、アスベスト除去や土壌汚染といった環境リスクも、通常の保険では免責がほとんどです。
これらには「環境汚染賠償責任保険」など、専用の保険や特約で備える必要があります。
従業員を守る「労災保険」は事業主の義務
忘れてはならないのが、自社の従業員に対するリスクです。
地中埋設物の撤去作業などでは、労働災害が起きる可能性があります。
この備えの基本となるのが、国が運営する「労働者災害補償保険(労災保険)」です。
これは事業者に加入が義務付けられている強制保険で、従業員が業務中に負傷した場合などの治療費や休業補償を行います。
労災だけでは不足?「使用者賠償責任保険」で万全に
労災保険の補償は国が定めた基準に限られ、慰謝料などすべての損害をカバーするわけではありません。
もし事故の原因に会社側の安全配慮義務違反が認められると、従業員側から高額な損害賠償を請求される可能性があります。
この訴訟リスクに備えるのが「使用者賠償責任保険」です。多くの場合、請負業者賠償責任保険の特約として加入できます。
セットで備えておくことで、従業員と会社、双方のリスクに対応できます。

【建設業向け】使用者賠償責任保険で高額リスク回避!労災だけでは足りない理由と注意点
建設現場では、高所作業や重機の使用など危険が伴う場面が多くあります。 もし事故が起きて従業員の方が大けがをした場合、企業(使用者)には高額な賠償責任が問われる可能性があります。 労災保険にはすでに加入している企業がほとんどだと思いますが、実はそれだけではカバーしきれないリスクがあることをご存じで
地中埋設物の保険で補償される範囲と対象外のケース
保険の補償範囲にはルールと限界があります。
自社に必要な備えを考えるためにも、まずは保険金が支払われるケースと、支払われないケースを具体的に見ていきましょう。
どこまで補償?保険金が支払われる具体例
請負業者賠償責任保険で補償されるのは、原則として「第三者の身体や財物に与えた損害」です。
- 第三者の所有物の修理費用: 掘削中に壊してしまった水道管、ガス管などの修理費。
- 法律上の賠償金: 水漏れによる家財への損害など、第三者が被った被害への賠償金。
- 治療費や慰謝料: 第三者にケガをさせてしまった場合の治療費など。
ただし、発見された埋設物自体の撤去・処分費用は対象外なので注意しましょう。
意外な注意点! 保険金が支払われない主なケース
契約には必ず「免責事由」という、保険金が支払われないケースが定められています。
特に以下の点には注意が必要です。
- 地下埋設物損壊不担保特約: 保険料を安くする代わりに、地下埋設物損壊を補償対象外とする特約です。解体業者にとっては致命的になりかねないため、契約時に必ず確認しましょう。
- 騒音・振動・地盤沈下: これらによる被害は標準契約では免責が一般的です。補償するには別途特約が必要ですが、建物のひび割れといった物的損壊がなければ適用は難しいのが実情です。
- 有害物質・汚染: アスベスト飛散や土壌汚染といった事故も、多くの場合免責事項です。専用の「環境汚染賠償責任保険」などで備える必要があります。

解体工事の保険と免責|「保険が効かない」5つのケースと対策
「解体工事の作業対象である建物そのものは、多くの保険で補償の対象外になる」 実は、解体事業者が加入する賠償責任保険には、このように補償が適用されない「免責事項」がいくつも定められています。 このルールを知らないまま万が一の事態が起きれば、損害が自己負担となり、会社の経営に大きな影響を与えることも
契約次第で減額も?知っておきたい注意点
もしもの時、保険金が想定より少なくなることもあります。その原因は、ほとんどの場合、契約内容にあります。
- 保険金額(支払限度額): そもそも設定額が低ければ、それを超える損害は補償されません。リスクに見合った十分な金額設定が重要です。
- 免責金額(自己負担額): 設定した免責金額以下の損害は、全額自己負担です。
- 通知義務違反: 事故発生後、正当な理由なく保険会社への報告が遅れると、保険金が減額される可能性があります。
保険を使うと翌年の保険料は上がるのか
保険金を請求すると、翌年度からの保険料に影響が出る可能性はあります。
多くの保険には、無事故が続くと保険料が割り引かれる「無事故割引」があります。
保険金を請求するとこの割引がなくなったり、保険料が割増になったりすることがあります。
ただし、保険は万一の際に事業を守るためのもの。
将来の保険料を気にして請求をためらうのは本末転倒です。
むしろ、日頃からの安全管理への取り組みが、長期的に保険料へ良い影響を与えることもあります。
解体工事の保険料をうまく抑える3つの方法:団体割引がおすすめ
補償内容を維持しつつ、保険料という固定費を上手に削減する方法も存在します。
ここでは3つの視点からご紹介します。
- 補償内容の最適化
- 団体割引の活用・安全対策による割引制度
- 複数プランの比較検討
方法1:自社の実態に合わせて補償内容を最適化する
契約内容を見直し、自社にとって本当に必要な補償に絞り込むことで、保険料を削減できます。
有効なのは「免責金額(自己負担額)の引き上げ」です。
免責金額を高く設定すれば、その分保険料は安くなります。
小規模な損害は自社で対応し、保険は大規模な事故に備える、という考え方です。
ただし、コスト削減を優先するあまり、解体工事特有の必須リスク(地中埋設物、近隣賠償など)を安易に削らないよう、専門家と相談しながら慎重に見極めることが欠かせません。
方法2:団体割引や安全への取り組みで有利な条件を
補償内容の見直し以外にも、保険料を抑える方法はあります。
まず「団体割引」を確認しましょう。
建設業協会などが組合員向けに割安な団体保険プランを用意していることがあります。
個人契約より10%〜30%ほど安くなるケースも珍しくありません。
次に、日頃の安全管理への取り組み、すなわち「企業信用力」のアピールです。
優良事業者向けの割引制度を設けている保険会社もあり、無事故記録や安全管理体制などが評価されれば、割引につながることがあります。
方法3:保険のプロに相談し、費用対効果の高いプランを選ぶ
加入する保険会社やプランを見直すだけでも、保険料は大きく変わることがあります。
同じ補償内容でも、どの保険会社の商品を選ぶかで、年間の保険料が数十万円単位で変わることも決して珍しくありません。
実際に、私たちマルエイソリューションにご相談いただいたお客様の中には、保険全体の見直しを行った結果、年間の保険料を約80%削減できたというケースもあります。(参考:マルエイソリューション)
現在の保険に長年入り続けている会社ほど、一度専門家の視点で見直すことで、大きな費用削減が期待できます。

工事保険の金額相場は?必要補償・保険料を安くする方法を専門家が解説
建設現場は高所作業や大型機械の使用など、事故リスクが他の業種と比べて格段に高いといわれます。 万が一、大きなけがや資材の破損、近隣建物への被害などが起こった場合、数千万円から数億円の賠償金が発生することも珍しくありません。 しかし、こうしたリスクに対して「工事保険」の加入を後回しにしている事業者
まとめ:最適な保険で、万一の地中埋設物に備えよう
ここまで、解体工事での地中埋設物のリスクに備える保険について、具体的な補償範囲から保険料を抑える方法まで解説してきました。
自社のリスクに合った保険を備えておくことで、安定した事業運営につながります。
- 基本の保険を確認する: まずは「請負業者賠償責任保険」で、地中埋設物が補償されるか契約内容を確かめましょう。
- 撤去費用に備える: 見つかった埋設物自体の撤去費用は、基本保険の対象外です。専用の特約などで備える必要があります。
- 従業員と会社を守る: 従業員のための「労災保険」と、会社を守る「使用者賠償責任保険」は、セットでの加入を検討しましょう。
- 保険料を抑える: 団体割引の活用や専門家への相談で、保険料を抑えられる場合があります。
しかし、数ある保険商品の中から、本当に自社に最適なプランを独力で見つけ出すのは容易ではありません。
「今の保険で、本当に地中埋設物の撤去費用までカバーできる?」
「施主とのトラブルを避けるため、もっと万全な備えはないだろうか?」
「補償はしっかりさせたいけど、保険料はできるだけ抑えたい…」
もし、このようなお悩みや疑問をお持ちでしたら、ぜひ一度、私たちマルエイソリューションにご相談ください。
- コスト削減に自信あり!:
独自の団体割引や保険会社ごとのプラン比較により、保険料の大幅な削減を目指せます。 - 解体業に特化した最適プランをご提案:
国内外の多数の商品の中から、貴社の事業内容や工事規模を踏まえ、地中埋設物リスクに本当に必要な補償プランを公平な視点でご提案します。 - 保険の”穴”を専門家がチェック:
「請負業者賠償責任保険」だけではカバーしきれない撤去費用や環境汚染リスクなど、専門家が契約内容を分析し、必要な特約を的確にアドバイスします。 - 安心の実績とサポート:
建設・解体業の保険に特化し、これまで多くのお客様のリスク対策をお手伝いしてきた実績があります。
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